あずきと抹茶の2種類が、今冬のムースポッキーの布陣である。和である。そして、この時期何と言っても欠かせないイチゴ味も加えておこう。
今年のポッキーは気合が違う。いつもならスルーする私を無視させないものがある。
イメージ通り、洋菓子のチョコに象徴されるような甘さとは一線を画す甘さ。それはまるでトップノートを限りなく抑え、ミドルノートからラストノートへ移る間際を緩やかに愉しむような風味である。ギターに例えるなら(なんでだ)、トレブル(高音域)のつまみを思い切り絞って、センター・ピックアップとフロントピックアップの中間で奏でる甘い音。あるいは欧文と和文のタイポグラフィが調和しあう和洋折衷なエディトリアルデザインのような、実に日本人だからこそ生む事のできた感のある見事なお菓子である。
…まあ、ここまで美辞麗句を並べなくてもいいかも知れないが、ひっくるめて言えば、美味しい。これに尽きる。ムースの食感とあずきはよくマッチする。ここまで来ると、このポッキーに合う飲み物が気になってくる。アンパンや饅頭との相性が良いのは、お茶、そして牛乳である。一方のラインナップが抹茶なので、お茶を持ってくると多分、思いっきりカブる。そこであずきとの相性を優先して、私は牛乳、しかもホットミルクをこのポッキーにカップリングしたい。
この数年、私は『Fran』派を自認していたが、今回の『ムースポッキーあずき』に関しては、支持したい。今冬の『Fran』はティラミスなど、いわば西洋に流れた感がある。一方、『ポッキー』は和。ムースという食感を武器にしていた『ポッキー』が初めて和と真剣に向き合った結果、見事に食感と素材のマッチングを見つけた印象がある。この点において今回の対決は『ムースポッキー』に軍配が上がると見ているがどうだろうか。
もう一つのラインナップである『ムースポッキー抹茶』を食べるまでもなく、判断したが、一つ提案。このようなムースを何種類も用意し、何もトッピングされていないポッキーにムースフレーバーを選択して愉しむムースポッキー・バーを作ったらどうか。本当にムースのフワっとした柔らかな食感を愉しむ事ができるんじゃないだろうか。