
ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)。パリ6区オデオンにある。今、パリで最も予約が取りにくいビストロの一つ。左隣にはクレープ屋のラヴァン・コントワール(Crêprie l'avant comptoir)がある。2011年、新年一発目はしょっぱいもので。
予約がいらないランチ目当てで出来上がった行列はかなりのもので、店の前に来た途端、ちょっとうろたえた。行列は昔から苦手だったが、こちらは観光に来ているから時間は平気だが、ランチの時間帯で自分たちの席が回ってくるのかどうかが心配だった。これはさすがにダメでも仕方ないかな……と。
しかし、運良くピッタリと自分たちはテラス席を6名分確保。このメンバー、引きが強過ぎるにも程がある(笑)
この日の日中の気温は2度くらい……だったか。こんな日にテラス席で飯を食うというのも、なかなか経験できないこと。
自分が食べたのは前菜にフォアグラと洋梨のテリーヌ、主菜に牛ほほ肉のスープ。



フォアグラはパリ滞在期間中、徹底的に食いまくった料理。中でも一番ユニークに感じたのがこのフォアグラと洋梨のテリーヌだった。上には……白菜。「Choux Chinois」と記載されていた。シューと言われるとキャベツかと思ってしまうが、白菜とはこれいかに。中国のキャベツという認識のされ方のようだ。

そして、洋梨のコンポートをさらに煮詰めたものだろうか。これが意外な組み合わせというか、フォアグラと甘いものを合わせるのか……と驚いた。だが、よく考えたらこの組み合わせは石榴とフォアグラの組み合わせをオテル・ド・クリヨンのレ・ザンバサデュールでも経験している。フォアグラと甘いもの。普通に存在する組み合わせなのかも知れない。



そして主菜の牛ほほ肉のスープ。柔らかく煮込まれたとろけそうな牛ほほ肉。マカロニのエルボーが沢山入っている。フランス料理にもマカロニは使われるのか。これがこの日の極寒のテラス席では個人的に大ヒット。美味かっただけじゃなく、メチャクチャ暖まる!

後ろで行列をなしていた英語圏の人達の中に「Crazy」と言っていた人がいたが、確かにこの糞寒い中でテラス席で飯食ってたらクレイジーですよね、はい。そりゃもっとも。だが、頭上にはヒーター、膝には店専用のブランケット。実は思ったほど寒くなかったのだ。加えて、背中ごしから更に発せられた「His Choice is very nice.」という一言もしっかりと聞き逃さなかった。ん?……この牛ほほ肉のスープだろ?(笑) 当ったり前じゃねえか。こんな寒かったら暖かいもん食うに決まってんだろっ!!(笑) 生きるか死ぬかなんだよ、と。


それはさておき、このル・コントワールでの昼食も実に思い出深かった。テラス席の雰囲気といい、行列に並んでいる人たちの「この店の食いもんに早くありつきたい」というヒシヒシとした様子、料理の佇まいにパンのワイルドさ。美味しい食事をしている…というよりも、旨い飯食ってる…と言いたくなるような。一瞬我を忘れてパンをちぎって食べずに一枚のスライスを手に取ってはしたなくも直接齧りついてシェフに嗜められたほど(笑) 「うわ、いかん。今オレ、ケモノだったわ…」と我に返った。危うく魔に取り込まれるところだった。背中の犬鎧(@ベルセルク)がザワザワしてた(笑)

ああ、オレらってヒト科の動物だな……と感じさせるものがあったな。自分たちのいる空間そのものが「ある時代の群像」のようにさえ見えたというか。前日のシェ・ミッシェルでの旅の温もりの一日を経てここル・コントワールでの昼食で、何か自分の中で一気に解放されたものがあったように感じた。このライブ感は溜らなかった。これを求めていた。パリでこれが見たかったし、ここに一度身を置いてみたかった。朝から随分と寒い一日だったが、心はみるみると暖まっていった。



そのパンだが、こちらで出されているのはあのプージョランのパン。7区サン・ドミニク通りそばにあるセッコは元プージョランのあった場所。Jean-Luc Poujauran。…契約のこじれから自分の名前でパンを売れなくなってしまったジャン=リュック・プージョランはレストランやビストロなどに卸す専門の店を2006年に再開した。出発前にジャン・ミエにも卸していると聞いていたが、今回の訪問ではプージョランのパンは並んでいなかったように見えた。入荷してる日としてない日があるのだろうか。
パリへ来て必ず食べておきたいと思っていたパンがプージョラン。独立した路面店が今や一店も存在しないのなら、レストランかビストロで味わうしかないプージョランのパン。これを食べ忘れてパリのパンを食べてきたとは口が裂けても言えなかった。
プージョランのパン・ド・カンパーニュはやや酸味がある。酸味があるカンパーニュは決して得意ではないのだけど、このカンパーニュ、最初は酸味が香るものの口に入れると不思議なほど酸味を感じさせない。最初にほんのり香る程度で、食べても酸味のキツさがなかった。「これならイケるか……」とその後のブランジュリー、レストラン巡りに希望の光が差した。食感は割とワイルド。おそらくル・コントワール仕様になっているものと思われた。ル・コントワール仕様というよりもイヴ・カンデボルド仕様というか。この店の雰囲気にとてもよく合ったカンパーニュだった。このような酸味であるなら、苦手意識を克服できるかもしれないと感じさせてくれた。


一方、ここからは同行者さんたちが食べた料理を。

こちらは豚足のカルパッチョ。やっぱり白菜(Choux Chinois)を載せるようだ。前日の晩飯に北駅(Gare de Nord)そばの人気ブルターニュ料理店シェ・ミッシェル(Chez Michel)で前菜として食べていたのでル・コントワールでは選択しなかったが、こちらも美味しそうだった。

こちらはブータン・ブランか。ブータンは白も黒も、どういうわけか全然食べずに終わった記憶が。帰国してからちょっと心残りが。





[ Le Comptoir du Relais(ル・コントワール・デュ・ルレ) ]
場所:5, Carrefour de l'Odeon 75006 PARIS
最寄駅:メトロ4、10番線「オデオン」駅より。
営業時間:7:15-18:00(平日)、ディナー/20:30〜(予約のみ)、ランチは予約不要。
休日:なし
場所:5, Carrefour de l'Odeon 75006 PARIS
最寄駅:メトロ4、10番線「オデオン」駅より。
営業時間:7:15-18:00(平日)、ディナー/20:30〜(予約のみ)、ランチは予約不要。
休日:なし