2011年01月02日

5, Carrefour de l'Odeon 75006 PARIS/Le Comptoir du Relais:フォアグラと洋梨のテリーヌ、牛ほほ肉のスープ

ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)。パリ6区オデオンにある。今、パリで最も予約が取りにくいビストロの一つ。左隣にはクレープ屋のラヴァン・コントワール(Crêprie l'avant comptoir)がある。2011年、新年一発目はしょっぱいもので。

予約がいらないランチ目当てで出来上がった行列はかなりのもので、店の前に来た途端、ちょっとうろたえた。行列は昔から苦手だったが、こちらは観光に来ているから時間は平気だが、ランチの時間帯で自分たちの席が回ってくるのかどうかが心配だった。これはさすがにダメでも仕方ないかな……と。

しかし、運良くピッタリと自分たちはテラス席を6名分確保。このメンバー、引きが強過ぎるにも程がある(笑)
この日の日中の気温は2度くらい……だったか。こんな日にテラス席で飯を食うというのも、なかなか経験できないこと。

自分が食べたのは前菜にフォアグラと洋梨のテリーヌ、主菜に牛ほほ肉のスープ。

ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


キャプションフォアグラと洋梨のテリーヌキャプション

フォアグラはパリ滞在期間中、徹底的に食いまくった料理。中でも一番ユニークに感じたのがこのフォアグラと洋梨のテリーヌだった。上には……白菜。「Choux Chinois」と記載されていた。シューと言われるとキャベツかと思ってしまうが、白菜とはこれいかに。中国のキャベツという認識のされ方のようだ。

ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


そして、洋梨のコンポートをさらに煮詰めたものだろうか。これが意外な組み合わせというか、フォアグラと甘いものを合わせるのか……と驚いた。だが、よく考えたらこの組み合わせは石榴とフォアグラの組み合わせをオテル・ド・クリヨンのレ・ザンバサデュールでも経験している。フォアグラと甘いもの。普通に存在する組み合わせなのかも知れない。

ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


キャプション牛ほほ肉のスープキャプション

そして主菜の牛ほほ肉のスープ。柔らかく煮込まれたとろけそうな牛ほほ肉。マカロニのエルボーが沢山入っている。フランス料理にもマカロニは使われるのか。これがこの日の極寒のテラス席では個人的に大ヒット。美味かっただけじゃなく、メチャクチャ暖まる!

ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


後ろで行列をなしていた英語圏の人達の中に「Crazy」と言っていた人がいたが、確かにこの糞寒い中でテラス席で飯食ってたらクレイジーですよね、はい。そりゃもっとも。だが、頭上にはヒーター、膝には店専用のブランケット。実は思ったほど寒くなかったのだ。加えて、背中ごしから更に発せられた「His Choice is very nice.」という一言もしっかりと聞き逃さなかった。ん?……この牛ほほ肉のスープだろ?(笑) 当ったり前じゃねえか。こんな寒かったら暖かいもん食うに決まってんだろっ!!(笑) 生きるか死ぬかなんだよ、と。

ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


それはさておき、このル・コントワールでの昼食も実に思い出深かった。テラス席の雰囲気といい、行列に並んでいる人たちの「この店の食いもんに早くありつきたい」というヒシヒシとした様子、料理の佇まいにパンのワイルドさ。美味しい食事をしている…というよりも、旨い飯食ってる…と言いたくなるような。一瞬我を忘れてパンをちぎって食べずに一枚のスライスを手に取ってはしたなくも直接齧りついてシェフに嗜められたほど(笑) 「うわ、いかん。今オレ、ケモノだったわ…」と我に返った。危うく魔に取り込まれるところだった。背中の犬鎧(@ベルセルク)がザワザワしてた(笑)

ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


ああ、オレらってヒト科の動物だな……と感じさせるものがあったな。自分たちのいる空間そのものが「ある時代の群像」のようにさえ見えたというか。前日のシェ・ミッシェルでの旅の温もりの一日を経てここル・コントワールでの昼食で、何か自分の中で一気に解放されたものがあったように感じた。このライブ感は溜らなかった。これを求めていた。パリでこれが見たかったし、ここに一度身を置いてみたかった。朝から随分と寒い一日だったが、心はみるみると暖まっていった。

ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)/Poujauran Pain de Campagne


キャプションプージョランのパンキャプション

そのパンだが、こちらで出されているのはあのプージョランのパン。7区サン・ドミニク通りそばにあるセッコは元プージョランのあった場所。Jean-Luc Poujauran。…契約のこじれから自分の名前でパンを売れなくなってしまったジャン=リュック・プージョランはレストランやビストロなどに卸す専門の店を2006年に再開した。出発前にジャン・ミエにも卸していると聞いていたが、今回の訪問ではプージョランのパンは並んでいなかったように見えた。入荷してる日としてない日があるのだろうか。

パリへ来て必ず食べておきたいと思っていたパンがプージョラン。独立した路面店が今や一店も存在しないのなら、レストランかビストロで味わうしかないプージョランのパン。これを食べ忘れてパリのパンを食べてきたとは口が裂けても言えなかった。

プージョランのパン・ド・カンパーニュはやや酸味がある。酸味があるカンパーニュは決して得意ではないのだけど、このカンパーニュ、最初は酸味が香るものの口に入れると不思議なほど酸味を感じさせない。最初にほんのり香る程度で、食べても酸味のキツさがなかった。「これならイケるか……」とその後のブランジュリー、レストラン巡りに希望の光が差した。食感は割とワイルド。おそらくル・コントワール仕様になっているものと思われた。ル・コントワール仕様というよりもイヴ・カンデボルド仕様というか。この店の雰囲気にとてもよく合ったカンパーニュだった。このような酸味であるなら、苦手意識を克服できるかもしれないと感じさせてくれた。

キャプションル・コントワールの料理いろいろ。キャプション

一方、ここからは同行者さんたちが食べた料理を。

ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


こちらは豚足のカルパッチョ。やっぱり白菜(Choux Chinois)を載せるようだ。前日の晩飯に北駅(Gare de Nord)そばの人気ブルターニュ料理店シェ・ミッシェル(Chez Michel)で前菜として食べていたのでル・コントワールでは選択しなかったが、こちらも美味しそうだった。

ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


こちらはブータン・ブランか。ブータンは白も黒も、どういうわけか全然食べずに終わった記憶が。帰国してからちょっと心残りが。

ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


ル・コントワール・デュ・ルレ(Le Comptoir du Relais)


[ Le Comptoir du Relais(ル・コントワール・デュ・ルレ) ]

場所:5, Carrefour de l'Odeon 75006 PARIS
最寄駅:メトロ4、10番線「オデオン」駅より。
営業時間:7:15-18:00(平日)、ディナー/20:30〜(予約のみ)、ランチは予約不要。
休日:なし

2011年01月05日

29-35 rue de Belleville 75019 PARIS/太平洋酒家(Pacifique):北京ダック、炒飯、焼きそば、鴨

29-35 rue de Belleville 75019 PARIS/太平洋酒家(Pacifique):北京ダック、炒飯、焼きそば、鴨


真っ暗な早朝にシャルル・ド・ゴール空港に降りてからホテルへ荷物を置いて瞬く間に過ぎて行ったパリ到着初日の晩飯はなんと中華。小さな中華街がある地域、パリ19区ベルヴィル(Belleville)にある太平洋酒家。いきなり初日にカルチェ・ラタンの街並を見て面食らったと思いきや、夜の帳が下りた頃このベルヴィル通りを歩く中、あちこちに漢字が見え始めてきた。途端に日本人にグッと近くなったように感じられる街並がネオンとともに浮かび上がった。

今振り返ってみても、この辺りはまるで欧米の映画に出てくる中国や日本の繁華街のような描かれ方に見えてくるような雰囲気。ちょっと危険な香りのする泥臭さを感じさせるような。

日本にいると、なまじ中華料理が身近過ぎて生活の中に溶け込んでしまう。が、初めて「外」から見た中華料理屋は、自分の目には東京にいる視点とは相容れない、完全に異国料理の店だった。パリで米を食う安心感みたいなものは一切なかった。普段の食生活では和食と入り混じって境界線を感じないように見え続けたはずの中華料理は、目の前で確かに一線が引かれていた。店にある空間が、日本に溶け込む中華料理屋のそれではないと感じた。東京や横浜にある中華屋に入った時の室内の照明はとても明るいことに気づいた。これは地下鉄の連絡路でも同じように感じた。東京って、実はかなり明るいと思う。良い悪いではなく。

ここは薄暗い。二日目の夜に行った中華屋も薄暗かった。あの薄暗さが、日本人の自分には異様なムードを加えていた。見知ったものと違う感覚が与える怖さというか。もうすでに自分は日本の時間や空気や質感とは完全に分断されていると観念した。適応し馴染んでいく他ないというか、事前準備や心構えの役立たなさというか。パリへ来てメトロに乗った時に、半年間勉強したつもりのフランス語を一旦リセットした時と相通じるものを感じた。恐怖と歓喜が同時に沸き立つ感覚。

29-35 rue de Belleville 75019 PARIS/太平洋酒家(Pacifique):北京ダック、炒飯、焼きそば、鴨


今回のパリでは初日と二日目、そして最終日の3回中華料理を食べる機会があった。昼に食べたレストラン ジャディスの余韻はまだ決して冷めてはいなかったが、この太平洋酒家も鮮烈な印象を残すお店となった。

キャプション 青島ビールに喉が鳴るパリの夜キャプション

ビールは青島(チンタオ/Tsingtao Beer)ビールを飲んだ。このビールを飲むのは初めてだったが、美味かったな…。すっきりとした喉越しで、恐ろしくクリア。辛くなく、苦味もキツくない。胃に負担をかけない程よく冷えた、丁度いい温度。しかも安かった。飲んだ瞬間に、東京へ戻ったら絶対飲もうと決めた(といいつつ、まだ飲んでないのだが)。これはいくら飲んでも平気と感じるくらいの飲みやすさ。そう書いていたら無性に飲みたくなった。近々、何処かに置いてないか探しに行こうと思う。冷蔵庫にストックしておきたいビール。

29-35 rue de Belleville 75019 PARIS/太平洋酒家(Pacifique):北京ダック、炒飯、焼きそば、鴨


キャプション 太平洋酒家の北京ダックに舌鼓を打つキャプション

出てきた料理は北京ダック。皮が綺麗に焼かれていて、いい照り具合。香ばしくパリッとしていて美味い。一緒に乗せたネギと味噌タレも美味かった。鴨肉もボリュームがあり、いい締まり具合で美味かったが、また訪問した時に同じメニュを食べた後、どっちをお代わりするかと訊かれたら迷わず北京ダックだ。

そして、炒飯。やや縦長で、白い粒。パラッとしていてベタ付きがない。ネギと卵というシンプルな具だが、米の旨さにやられた。この米は……買って帰りそびれた。東京に戻っても再びこの米を食ってみたいと思っていたが。

29-35 rue de Belleville 75019 PARIS/太平洋酒家(Pacifique):北京ダック、炒飯、焼きそば、鴨


焼きそばもまた美味い。何だろう、オイスターソースあたりだろうか、これは? 日本人なので濃厚なソース焼きそばも美味いと感じるし、醤油ベースの焼きそばもとても好きだが、この焼きそばも美味かった…。麺にコシがあり、粉の味わいが伝わってきた。美味い理由はきっと麺だな、と感じた。何故パリで中華が美味いのか?……(笑)

付け合わせのキャベツも美味かった。パリ滞在中にキャベツを食べたのは多分この時だけだったが、イモムシみたいにパリパリ食べていたのを思い出す。北京ダックを食べる時に付けていた味噌ダレを付けて食べると抜群に美味かった。

店の傍にあったマクドナルドのすぐ隣に「Quality Burger Restaurant」という店があったのが面白かった。凄いことするな。

フランスでフランス料理が美味いのはその国の料理だから当然として、中華が美味いっていうのは初めてパリに来た日本人にとって反則に近い。ここベルヴィルがパリの中華街の一つだと判っていても、いきなりパリ初日で中華が美味いのは勘弁してほしい。入ってくる新鮮な情報が多過ぎる。

[ 太平洋酒家(Pacifique) ]

場所:29-35 rue de Belleville 75019 PARIS
最寄駅:メトロ2、11番線「ベルヴィル」駅より。
営業時間:11:00-2:00
休日:なし

2011年06月04日

17, Rue de Beaujolais - 75001 PARIS/Le Grand Véfourの午後

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2010年11月24日、昼。パリ1区。ボォジョレ通り沿いにあるレストランに来た。ナポレオンも食事をしたことがあるというパレ・ロワイヤルにある格式高きレストラン ル・グラン・ヴェフール(Le Grand Véfour)。パレ・ロワイヤルは東京人の自分に新宿御苑のフランス式庭園(プラタナス並木)あるいは昭和記念公園立川口のイチョウ並木を脳裏にちらつかせた。風景写真を撮り歩いていた頃のことを思い出せてくれた。そんなせいか、パリにいてもどこか懐かしくさせる不思議な感覚。パリの中で、年中足を運び眺め続けてきた東京の中のフランスを思い出させてくれる。とても静かで優しい光が差す場所。ギャルリー・ヴィヴィエンヌのあたりからパレ・ロワイヤルのあたりは、パリ滞在中何度も歩いた場所。
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1784年に「カフェ・ド・シャルトル(Café de Chartres)」ができ、その10年後にジャン・ヴェフール(Jean Véfour)がやってきてからこのパレ・ロワイヤルのカフェはレストランへと生まれ変わった。

1914年から1945年までのル・グラン・ヴェフールは翳りの時代。第二次世界大戦終了後、マキシム(日本でもお馴染みのマキシム・ド・パリ)の所有者であるルイ・ヴォダブル(Louis Vaudable)がル・グラン・ヴェフールを買い取り、やがて1948年にレイモン・オリヴェル(Raymond Oliver)に譲渡されたル・グラン・ヴェフールはかつての輝きを取り戻した。

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三ツ星から二ツ星、そして三ツ星に返り咲いたこのレストランは2008年に再び二ツ星に格下げされた。しかしながらこの格式。この日の食事も残念ながら恥じらいを引き換えにチャンスをものにする思い切りの良さは、カメラと一緒にバッグの中にしまったままに。星付きの格式高いレストランは、正直精神的にシンドかったな…(苦笑)、肩凝った。

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レイモン・オリヴェルの後に就任したシェフ、ギィ・マルタン(Guy Martin)。彼の出身地の郷土菓子であるビスキュイ・ド・サヴォワ。後ろのテーブルに目をやると、ブリオッシュもビスキュイ・ド・サヴォワも、お化けみたいな大きさ。あんなにデカイものが運ばれてくるのか? すっかり油断してた。

シャンパーニュを楽しみながら前菜、主菜の握りこぶしを一回り大きくしたようなアンコウに舌鼓を打ち、チーズ盛り合わせの頃には胃袋の容量が満タンに近いことを示すカラータイマーが点滅したような気がした。それでも食べ進め、各種チーズの香りと味わいに圧倒され、更にはパート・ド・フリュイ、キャラメル、ヌガー、ショコラなどのプティフール…。

そして印象的だったのはやはりアヴァン・デセールのビスキュイ・ド・サヴォワだった。東京で何度か味わっているこのフワフワしたビスキュイのサヴォワ地方郷土菓子をパリでも食べられるとは思っていなかった。

キャプションサヴォワ地方の郷土菓子、ビスキュイ・ド・サヴォワ:Biscuit de Savoieキャプション

旅の皆に内緒でしょっぱいものに集中するという背信行為に及んでいた割には甘時間的にドンピシャの機会に恵まれた。初日にサン・ミッシェルでお菓子の神様詣をしておいたのが効いたのかもしれない。

冗談みたいに大きなビスキュイ・ド・サヴォワをセルベールに切り分けてもらう。極僅かにプツッとした薄皮の表面の歯触りにふっくらとした中の生地の食感のバランスが絶妙で美味かった。かすかにシナモンの香り。とてもシンプルなお菓子だけど、やっぱり美味い。作り方も質感も形もまるで違うのは承知しているのにもかかわらず、何故だか一瞬ビスキュイ・ア・ラ・キュイエールのことを思い出してしまった。食感のバランスに、何処か重なる部分でもあったのかも。やはり首都の菓子でも地方菓子でもフランス菓子の味わいに触れてゆくと、生地の多様性に出会う。生地に様々な表現がある。フランス菓子の魅力に取り憑かれる人が出会うことができるこの多様性。

それにしても随分長いこと過ごした。この日は午後に何処かへ出かけた記憶が一切ない。それもそのはず、ずっとル・グラン・ヴェフールにいたのだった。あとほんの数時を過ぎればすぐに晩餐だ。

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[ ル・グラン・ヴェフール(Le Grand Véfour) ]

場所:17, Rue de Beaujolais - 75001 PARIS
最寄駅:メトロ1、7番線「Palais Royal Musée du Louvre」駅より。
定休日:土、日、(2011年は8月2日〜30日、12月24日〜31日がバカンス休業)

2011年06月06日

1, Rue de Mail 75002 PARIS/Restaurant Chez GEORGES:Entrecôte Moelleux、Pommes Pont-Neuf、Mille Feuille, Baba au Rhum (avec de la Crème Double)

Restaurant Chez GEORGES:Entrecôte Moelleux/レストラン シェ・ジョルジュ:アントレコート・モワルー


2010年11月29日。出発が夜23時近くなので最終日もほぼ一日過ごすとはいえ、きっちり24時間となるとこの日が最後の夜。昼のル・セヴェロ(Le SEVERO)でのフォーフィレに続いて夜も肉。毎日昼と夜とでバランスを考えて選んでいたが、この日だけは肉一本で攻めた。つい最近、二ヶ月近く前に店内をいくらか改装したようだ。

パリ2区、ブルス(Bourse)のヴィクトワール広場(Place des Victoires)そばにある古風なレストラン。この日、セルブーズが誕生日らしく、テーブルに来たセルベールが「チップを弾んでくれ」と囁いた。

めでたい日のディナーに同席させてもらったような心地で料理を待った。彼女の誕生日パーティそのものとなった賑やかな店内。暖かい。ここも暖かい。……シェ・ミッシェルの時と同じ、あの日と同じ匂いだ。

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キャプション決戦、シェ・ジョルジュキャプション

目の前に運ばれたアントレコート・モワルー。フリル(飾り気)などないシンプルな盛り付け。直球ストレート。無骨だが、掛け値無しの肉料理。飾らないフランス料理にありついた。昼のル・セヴェロの記憶を残した流れのまま、このアントレコートと向き合った。パリを発つ前にステック・フリットを味わっておけて良かった。特にシェ・ジョルジュでアントレコートを食えたのは良かった。昼、夜、二回も肉料理を食ったが、肉料理単体でいえばル・セヴェロの方が味わい深かった。食事の時間という流れで行くとシェ・ジョルジュ。だが、どちらも実際は甲乙付け難い良さがあった。

Restaurant Chez GEORGES/レストラン シェ・ジョルジュ


パリ滞在中、とても印象的だった食材の一つがジャガイモ。普段の生活だとフレンチフライ・ポテトは太るからやめておこうかと逡巡することもある。実際普段はちっとも食べないのだが、シェ・ジョルジュのポンム・ポンヌフはサラッとした揚げ具合でギトギトしたところが一つもなかった。肉一色の一日だったがペロリと完食。中にイモのホクホク感と旨味が閉じ込められていた。どんな油を使ってるんだろう。そういえばラデュレにもポンム・ポンヌフ・ラデュレがある。

Restaurant Chez GEORGES:Pommes Pont-Neuf/レストラン シェ・ジョルジュ:ポンム・ポンヌフ


セップ茸、いんげん、ジャガイモ。付け合わせだけでもこれだけ美味かったら、いつまでも忘れられなくなってしまう。滞在中に食べた料理はどれも皿の中に食べ残すものが一つもない食事だった。特にジャガイモはフリットだけでなく、いろんな形で味わうことが出来た。いんげんに至っては、帰国早々、グラン・デピスリー・ド・パリで買って帰ったAOCバターでソテして食ったが、いんげんが好きになれそうになった。セップ茸はもとより香りの高い茸だが、脇に回ってこの主張というのは凄かった。

キャプションノー・フリルな料理、ノー・フリルな菓子。キャプション

ポンム繋がりでリンゴの菓子を食べようと思ってデセールにはタルト・タタンをお願いしたが、あいにく切らしていたそうで急遽ミルフイユに変更。結果論だが、今回のパリではミルフイユに縁を感じた瞬間だった。サロン・ド・テ カレットのミルフイユから続いたミルフイユの食べ比べもひとまず今日がオーラス。直球ストレートな店のミルフイユだけあって、これもごくシンプルなもの。ノー・フリル。大らかで凄く良かった。パティスリーに並ぶミルフイユの方がずっと丁寧だけど、これで十分美味しかった。改めてミルフイユの美味さが染み込んだ。

Restaurant Chez GEORGES:Mille Feuille/レストラン シェ・ジョルジュ:ミルフィーユ


それでもなかなかの大振りで完食できるかどうか自信がなかったが、そんな小さな不安を土俵の外にうっちゃるかのようなババがやって来た。食ってる間に我々が萎んで小さくなったのではなかったし、遠近法を利用したギャグでもなかった。どう見てもこのババがデカかった。作り間違えたのかと思わせるくらいデカイ。さすがにアントルメのババは聞いたことがなかった。いやアントルメじゃないのか。ここにも今夜、決戦を果敢に挑む女子がいたのだな。そのいきおいやよし。一緒に大きなボールに添えられたクレーム・ドゥーブルだけ、微力ながらも手伝った。爽やかな味わいでなかなか美味。

Restaurant Chez GEORGES:Baba au Rhum/レストラン シェ・ジョルジュ:ババ・オ・ロム


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余韻を引きずりながら最後のパリの夜、草臥れた胃袋を癒すかのように歩いて連れられてきたのはポンヌフ橋。ポンム・ポンヌフを食べた後にポンヌフ橋とは気が利いてる。それにしても、夜のポンヌフは愛おしい。昼間のポンヌフもとてもいいのだが、夜はもっといい。こんな夜にこんな場所に連れてこられたら、一瞬でも「東京に帰りたくない」と思わされてしまう。

Pont-Neuf:ポンヌフ橋


[ Restaurant Chez GEORGES(レストラン シェ・ジョルジュ) ]

場所:1, Rue de Mail 75002 PARIS
最寄駅:メトロ1、8、12番線「Bourse」駅より。ヴィクトワール広場そば。
営業時間:12:00-14:00、19:00-22:00

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