2006年04月12日

目白/Aigre Douce(3):カスレット、ラクテ・フランボワーズ、クレーム・キャラメル、クレーム・ドゥ・フロマージュ、ケーク・キャラメル

日曜日の午後、エーグルドゥースに行ってきました。3回目です。もう完全に月一リピです。

…嬉しいんです。火曜日くらいからずっと嬉しかったんです。今日エーグルドゥースに行けるというのが、すごく嬉しかった。初めの2回がまだドキドキしたものだとすれば、3回目は、もう嬉しくて仕方ない。好きな女性に逢いに行くような気分。

といっても、品川でのんびりしてたら到着が4時になってしまうという自業自得エンターテインメント。

ところがその時間でもお客さんが結構いて、イートインスペースも満席でした。2卓しかないんですけどね。それでもほぼすべてのケーキが並んでいる安心感は、やっぱり嬉しい。コスト意識は大切だけど、「今から揃えても売れ残るから作らない、売り切れ御免」的な感覚のお店だと残念ですよね。ここはそうじゃないから嬉しいのです。

以前食べたドゥース・フレーズが綺麗に売り切れてましたが、その他のケーキ(レガル・カフェというケーキ)も最後の一個が売れると同時に沢山補充されていました。自分が店を出た後にきっと出来立てのドゥース・フレーズが並んでいた事でしょうね。

ちなみに、今月末の25日、26日、27日辺りが「勉強会」という事でお休みだそうです。27日はちょっと自信がないですね…。24日だったかな? あと5月2日も休みだったような。

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というわけで、以下コメントです。ちょっとヨロシク。

aigredouce_cassolette.jpg

○カスレット - Cassolette -(\420)

前回来た時に、女性のお客さんに譲ったために買えなかったエーグルドゥースのスペシャリテをようやく購入。

シュークリームがキャベツに例えられるならば、このカスレットはまるでジャガイモ。ジャガイモの皮を器にしたジャガイモのグラタン、といった雰囲気。上面をカラメリゼしたその中身にはキャラメル風味のバナナとカスタードがたっぷり詰まっています。カラメルに苦味があっていいです。ラム酒の風味もあります。

都会的に洗練されたフォルムを持つケーキもあるにはあるんですけど、こちらのケーキは洗練とは逆を行く、片田舎の畑の土臭さ、風の息吹、ママやおばあちゃんが作ってくれたオヤツのような家庭的な、生活の音が聞こえてくるようなケーキなんです。洗練に対して土着感のあるケーキと言えます。ここらへんがエーグルドゥースのたまらなく好きなところ。

さて実食。このケーキは他のケーキとは別に、スプーンを使って食べました。フォークで食べるのは無理がありそうな感カがしたんで。

中へ入れると、キャラメルでソテーしたバナナが顔を覗かせます。ザックリ感がいいですね。これをスペシャリテにする理由は、やっぱり土着、フランス菓子を伝えたいという部分からくるんでしょうね。それぞれははっきりした味ではあるけども、スタンダードでベーシックなケーキもあって、間口の広さを感じさせる。その一方で、洗練されたケーキも作る。そのバランスを組み合わせていくつかまとめて食べると、このお店の良さが強く感じられると思います。


aigredouce_lacteeframboise.jpg

○ラクテ・フランボワーズ - Lactée Framboise -(¥450)

これは初めて見るケーキでした。非常に洗練された外見。最初はフレジェを買う予定だったんですけど、もう今季は終わったのか、たまたま今日はなかったのか、ショーケースには一つも無かったので、同じ値段のこちらのケーキを選択。チョコ系はそろそろいっとこうと思ってたところでした。

まず、しっかり焼かれた分厚いタルト生地に、濃厚なアーモンドクリーム、その中心にはツブツブ感の残るフランボワーズのジャムが入っています。上面にはアーモンドスライスがゴジラの背中みたいに刺さっていて、その上を全体にミルクチョコレートでアイシング。このチョコはどこのチョコを使ってるんですかね?

最上部には半分にカットされたフランボワーズが2片、その横に、より光沢のあるチョコソースがかかり、更に金箔が添えてあります。

…このフランボワーズのジャムがまた酸味が強くて美味しいこと美味しいこと! 口に入れた瞬間たっぷり濃厚であるはずのアーモンドクリームの甘ったるさを、ビシっとシャープに征するように口に広がるフランボワーズのジャム。すげえぇえぇえぇ!!!

上に乗ってるフランボワーズは別にそれほどね、気を引くようなものではないと思うのです。いいフランボワーズだとは思うんですけど、上に乗ってるのはあくまで装飾的というか。

むしろ、中にあるフランボワーズ・ジャムの個性がすごいんです。もうツブツブ。コンフィチュールは順番からいえば最後の方に回すつもりだったけど、ケーク・シリーズを除く焼き菓子を差し置いて先に手を伸ばしてしまいそうな予感。やっぱり「甘くて酸っぱい」お店なんだな。

一応このケーキはチョコ系っていう意味で直感を頼りに選んでみたわけですが、フランボワーズの使い方によっては、チョコとフランボワーズの組み合わせってこんなに感動させてくれるのか、と確認した思いであります。ここまでちゃんと酸っぱいってのは嬉しいね嬉しいよ。

あー、いいものをいただきました。この先もずっと食べていきたい一品です。これはオススメ。ススメます! フランボワーズ(withチョコ)が好きな人は一度いっとくべきかと。

ちなみに、タルト台の下の滑り止めとして塗ってあるジュレはアプリコットのものでした。なんかイイっすね、これ。エーグルドゥースで最初に食べたチョコ系がこんなにメガヒットするとは。

aigredouce_cremedefromage_cremecaramel.jpg

○クレーム・キャラメル - Crème Caramel -(¥260)

低温で焼いた硬目のプリン。味は、正直普通です。ただ、最近のプリンはどこで見ても「なめらか」ですので、こういう王道的なプリンは懐かしく感じます。そろそろこういうプリンに戻りたいなと感じていたところだったので丁度良かった気がしました。

普通にクリーム部分だけ食べてると、思いっきり普通のプリンにしか感じないんですが、カラメルにぶち当たった途端、意外な個性を発見します。カラメルが非常に苦いですね。お酒がバッチリと効いています。このカラメルだけスプーンですくって食べようとはしない方がいいかも…。

カラメルに行き着くまで半分以上食べてしまったので、カラメルの強さが上回り過ぎてしまいました。早いうちにカラメルと混ぜておくといいバランスで食べられるんじゃないかと思いました。

硬いクリームとか、苦いカラメルとかいう方向性自体はすごく好きです。ちなみに一番好きなプリンはマーロウなんですが、あちらのカラメルは煮詰めた結果によって醸し出された黒い苦さだとすれば、エーグルドゥースの方は洋酒の効かせ方が強い、赤い苦さという印象。この赤い苦味は想像以上に強いので、人を選びそうですよ。ちょっとピリっとくるんです。「おお、ヤベエ!」って感じです(笑)

○クレーム・ドゥ・フロマージュ Crème de Fromage -(¥370)

当初は、もう一方のトランシュ・フロマージュを買うつもりでいましたが、実際にお店で見た限り、トランシュ・フロマージュは随分と薄く見えたので(笑)、高さ十分なこちらのクレーム・ドゥ・フロマージュを選択しちゃいました。それでも値段は一緒でした。

向うは、しっかりと焼いた濃厚なベイクドな感じで重厚、こっちはふんわりとしてサッパリした軽さのある感じ、という印象。トランシュ・フロマージュは次回いってみます。

さてこのクレーム・ドゥ・フロマージュは、フロマージュ・ムースの間にアプリコットのシロップを上にばっちり打ったスポンジを挟むという構成です。スポンジは割と薄いものになっていて、アプリコットのシロップが混ざっています。これが2対2層になって、最上部に控え目なシャンティーがクルクルとデコレートされています。単なるシャンティーというよりも、わずかに風味も感じました。

このシャンティーを舐めた後にフロマージュのムースを舐めると、フロマージュのコクを随分と感じるのですが、フォークを入れて全体を通して味わってみると、意外にもフロマージュがかなり控え目に変身し、アプリコットが代わって前面に迫り出すような、入れ替わり立ち替わり、といった様子を見せます。全体的には食べ易い万人受けしやすいケーキだと思います。

はっきりとした甘いケーキが並ぶ中で、割と食べ易いケーキもエーグルドゥースには並んでいる事が多いと思うのですが、このケーキはそういったラインナップの一つではないかと思いました。これでイマイチならさきほど挙げたベイクド・タイプのトランシュ・フロマージュを選択するといいのではないでしょうか。…それでもダメなら、…チーズケーキファクトリーとかしろたえ辺りで(笑)

aigredouce_cakecaramel.jpg

○ケーク・キャラメル - Cake Caramel -(¥1,050)

ついにケークシリーズへ手を伸ばしてみました。となれば、最初はやっぱりこれしかないでしょう。

エーグルドゥースのお店の匂い、っていうのがあるんです。どこの洋菓子店でもある程度甘い匂いがするものですよね。ただ、エーグルドゥースの匂いはタルト生地の匂い、そしてキャラメルの匂いなんですよ。今日やっと判りました。いや、別に匂いフェチではありません。

上部を覆う、このガリガリのキャラメル。すごい。フォークもナイフも入っていかないこの反発力というか抵抗感というんですか。もちろん、もう少し力を入れれば大丈夫です。生菓子の感覚でフォークやナイフを入れるとはね返される、といったレベルの硬さです。ガッチリとキープされたカラメリゼは日持ちします。長さは全長25〜30cmといった感じでしょうか。

一方、その香ばしいキャラメルの匂いとは裏腹に、生地自体は非常に食べ易さがありますね。見た目にはこれだけバッチリとキャラメルがかかっているので、まだ未体験の方にはさぞかし甘〜く見えるかもしれませんが、その甘さは実に控え目、程よい苦味と香ばしいキャラメルの食感。ただただ美しいの一言。

ただ、すでに4ツも生菓子を食べているので、ケーク・キャラメルは2回に分けて食べる事にしました。っていうか、翌日も食べたいなと。ちょうどチップのある辺りでこの日は止めました。

(追記)
翌日、残り半分を食べました。冷蔵庫に入れておいたせいか、上面のキャラメルは、より固く感じられました。しばらく置いて常温に戻してから食べるのがよさそうです。あいかわらず美味しいですね。箱に記載されている賞味期限は15日の土曜日まで。つまり一週間は持つという事です。すごいですね。

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エーグルドゥース(Aigre Douce)

場所:東京都新宿区下落合3-22-13
最寄駅:JR山手線「目白」駅より徒歩5〜6分
営業時間:10:00-19:00
定休日:水曜日(祝日の場合は翌日)
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今回の総評:「洗練と土着のジレンマについて」

中でも今回のヒットはラクテ・フランボワーズ。今まであったのかな? 新作? フレジェ買えなかったけど「まあいいや」って思いました。オリコン初登場1位って感じです。

またエーグルドゥースが好きになりました。だんだんに好きになって、そしてだんだん…どうなるんでしょうか(笑)


プレ・ドゥ・ラ・リヴィエールに引き続いて「洗練と土着」について考えてみました。言い換えればそれは柔らかさと硬さであり、軽さと重さであり、弱さと強さ。この二つを表現できる人ではないだろうかというのが僕の矢代シェフに対する印象、ということでした。洗練と土着のジレンマというものです。

その答えが今回、エーグルドゥースのカスレットにあると僕は思っていました。フランス菓子を通じてコミュニケーションをする、という事。その時寺井シェフが伝えたい事とは…。

それはきっとカスレットを食べる事でこのお店の方向性、哲学、思想、ポリシーがカバーできるのではないかと思うのです。一見「じゃがいものグラタン」風な外見は、都会的な洗練よりもむしろ片田舎的な土着を連想させます。

サツマイモを上品に可愛らしく使うケーキなら巷に幾らでも溢れているのですが、ジャガイモあるいはジャガイモを連想させるようなケーキ、というのはなかなか見つける事がありません。フランス菓子を菓子としてだけではなく食文化という部分も含めて伝えたいという思いがなければわざわざジャガイモには手を出さないんじゃないかなあと感じるのです。サツマイモそのものは土っぽい雰囲気もありますが、いかんせん素材としては熟れ過ぎてる感が否めないと僕は思います。そこでジャガイモあるいはジャガイモの持つ性格に目を向けるプレ・ドゥ・ラ・リヴィエールの矢代シェフやエーグルドゥースの寺井シェフに、非常に興味を持ちました。

あまりに都会的で洗練されてしまうと、つまり洗練が入り込んでくると、在り来たりなものを作らなくなる。チョコをグラッサージュするようにどんどん滑らかに、角がなくなってゆく。そんな時ベーシックな「土着」的なものは手枷足枷になってしまう場合があるとしたら、洗練をとことん真正面から受け止めるストイックなシェフは土着的なものから離れてしまうのでしょうか?

ギタリストのエリック・クラプトンが15年ほど前にインタビューで「自分は力強い(ここではForefulと言っていました)ギタリストでありたい。洗練が入ってくると普通な事をしなくなる。だから時折普通に演奏したり、時には粗雑に演奏する。バディ・ガイのように力強くありたい」と語っていた事がありました。

ケーキにおけるそれについては、もちろん雑な作り方をする、という事ではないんでしょうけど、例えばいつもよりもデコレーションをシンプルにするとか、ジェノワーズに何もシロップを打たないでショートケーキを作ってみるとか、日本人であるなら和素材を取り入れてみるとか。洗練との付き合い方があるような気がするんです。洗練が入り過ぎた時に味まで滑らかになり過ぎてゆく時があるとしたらどこで折り合いをつけるか、という部分が気になります。押せ押せで行くのか、土着に帰るのか。

洗練が入り込んできた時、そのバランスを保つのは土着ではないかと思うんです。自分のルーツ、源泉を常に意識できる傍に置いておく。がゆえに、洗練と土着のバランスが均衡に保たれる。フランス人に喜んでもらえるようなフランス菓子を作りたいというポリシーがある寺井シェフって、そんな風な、洗練と土着を絶妙にバランスさせるタイプのシェフなのではないかと勝手に邪推している次第です。こればかりはお話を伺ってみない事には判らないのですが。

ただ、だからといってすべての菓子が日本人の味覚を受け付けていないというのではなく、食べ易くベーシックなものもあるし、しっかり甘味と酸味を主張させるために引き算をちゃんとした作り方をしてますよね。引き算が巧いシェフは尊敬します。

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今回の写真のロケ地について。

購入後、エーグルドゥースのある目白通りを横断してピーコック側に渡ったら、目白駅とは反対方向へ少し行って、「目白四」停留所から都営バスの池65系統(関東バス・国際バスでも可)で数分。「哲学堂」(関東バス・国際バスなら一つ先の「哲学堂公園入口」でも可)で下車。中野の哲学堂公園で撮影しました。哲学堂公園はとてもいいところ。独りで物思いに耽るにはピッタリ(笑)

あらゆる部分が哲学的な意味を持つ独特な園内。一部、さる秘宝館的なネーミングもありますが、概ね落ち付いた雰囲気。桜と池が美しいのです。更に妙正寺川もあります。

哲学堂でエーグルドゥースの哲学とは何か…なんて妄想に耽っているうちに5時の鐘が鳴って、サッサと撤収しました(笑)
posted by 照乃芯 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | エーグルドゥース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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