
○ミルフィーユ・ヴァニラ- Mille Feuille au Vanille - (¥520)
ミルフィーユ・ヴァニラは訪問した時点で2個しかなくて、とっさに買いました。基本的な構造はミルフィーユ・ショコラと同じですが、こちらのバニラカスタードはショコラの方と比べると搾りがやや多めです。バニラの風味が強めのカスタードはとても優しいイメージ。上から見ると高さはないけど、横から見た時の構造はむしろ厚みを訴えてくる。
そして、横から見ると判るのですが、各層ごとに3箇所ずつ搾られているクリームの搾りの向きが「上の段だけ」違うんです。両サイドは縦向き、中央は横向き。すべて縦向きに搾れば、最初にフォークを入れた瞬間に最上部のフィユタージュが縦へ流れる可能性があり、横向きなら横へ。どちらへも流れないように縦、横、縦と向きを変えてある。それに加えてクリームを搾り出すパイプっていうんですか?アレがちゃんと「溝」ができるものを使ってあります。タイヤと同じです。つまり滑りにくいということ。ここら辺もすべては計算でしょう。味、大きさ、デザイン含めて520円取るだけのことはありますよ。ここまで理詰めのお菓子も珍しいかも。パティシエールだけど、女性的というよりは男性的なものをミルフィーユからは感じました。
実際は長さ12cmもあって確実に大きめなので、520円という価格設定も決して高いとは思いません。余所のパティスリーよりは単価が上がりますが、それでもまだ520円ですからね。580円だったら敬遠するかもしれないけど。
それに筑土八幡町はお菓子屋をやる上で決して家賃の高い町ではないと思うので(多分)場所代ではないと思います。もし520円では高く感じる人がいたとしても、少なくとも473円くらいはとっていいお菓子になってると思います。
味の作りは、ショコラの方でも書いた通り、すごく素直というか、むしろ保守的だとさえ思います。そこら辺はジャン=ポール・エヴァンのお弟子さんだったという部分が色濃く反映されているのかなと思います。というのも、ジャン=ポール・エヴァンという人はすごく保守的でコンサバティブなものを作る人だと思っているから。その意味ではお店に向かう道すがらにぼんやり想像した通りのケーキでした。
ただ、保守的が悪いという意味ではありません。変わった素材を用いたり、もっとトンガったケーキを作る人もいて、バラエティに富んでる方が楽しい。今回、お店に行くにあたってあちこちで情報を整理した時点でおそらくコンサヴァティブなお店だろうなとは思っていたんです。判っててこういうお店にすすんで足を運ぶということは、少なからず自分の中にも保守的なものがあるんだろうなあと感じます。ネットでの評判や写真などからお店を判断する時の自分の中の基準は、かなり保守的だと思ってます。でも、カー・ヴァンソンのケーキにはデザインや一味の工夫などに発見がありました。やっぱり注目していきたいお店です。
この一方で、最近オープンしたカカオエット・パリというラデュレやピエール・エルメで修行なさった若いパティシエさんのお店が中目黒にあるわけですよね。あちらはまた違った個性があるように感じます。エルメのもとで経験を積んだということは、非常にアヴァンギャルドなアプローチがあるのかな、とも感じますし。JPH譲りのコンサヴァティブなカー・ヴァンソンとはどう違うのか調べてみたいと思ってます。
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patisserie K.ViNCENT(パティスリー・カー・ヴァンソン)
住所:新宿区筑土八幡町1-2 第3NKビル102
最寄駅:JR総武線「飯田橋」駅下車、徒歩10分。
営業時間:11:00-19:00
定休日:水・木曜日、その他不定休(サイトのカレンダーで確認してください)
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