もうほぼ店頭からなくなったと思うので掲載することにした。こんな書き方すると、まるで「主文後回し」みたいだが。いわゆるパティシエスイーツ。

大きさは小振りで、直径約6.5cm。やや塩気のあるシュー皮に、もったりとしたかなり甘めのカスタード。とにかく甘い。いくつかまるで知らない材料があるけど、これまでのコンビニシュークリームにしたら材料はかなりシンプルな方。

シュー皮はコンビニシュークリームには珍しいくらいはっきりとした焼き目が付いているものの、その割にはシュー皮に香ばしい歯応えはなく、はっきりいえば昔ながらの昭和シュークリーム。高木シェフはシュー ド ママンのポイントの一つとして「シュー皮が固めなこと」を挙げているが、どんなに好意的に受け止めても従来のコンビニシュークリームが「物凄く柔らかい」とすればそれが「かなり柔らかい」に上がった程度でしかなく、少なくとも「固、硬」という字は絶対に使えない範疇。これまでのコンビニシュークリームとの違いが感じられるレベルではなかった。

使っている材料が極力少なく、添加物に出来るだけ頼らない方針で開発するとなると、表現力に制約が出てくるのかもしれない、生菓子の場合は。焼き菓子に関しては「極上のひとくち」シリーズで見事な実績があるだけに、結構真っ正直に作ってゆくのがセブンイレブンらしいのかなとも感じる。ゆえに限界ありと。
とても日本の昭和チックなシュークリームに見えるのに「フランスの田舎町に住んでるお母さんが〜」と訴えかけてる煽りなのはさておき、あえてこのようなテイストで商品開発するのにわざわざフランス菓子職人の名前と知恵を借りる必要があるのだろうか。その割にはむしろ日本の昭和チック。「フランスの田舎町」って言いたかっただけちゃんうか、と。「昔の懐かしさ」をコンセプトにするなら、セブンイレブンは過去に「なつかしシュークリーム」という商品を、おそらくパティシエ監修に頼らずに世に送り出したはずなのだが(近頃、一時的に復刻されていたが、食べ逃した)。
「誰々監修」というのは、一般的には基本「箔付け」であると思って、ほぼ差し支えは無い。詳しくは後述するとして、監修もの食品における理想的結果を強いて述べるなら、単発企画ではなく継続性があるものであり、単なる箔付けではなく将来の品質向上に貢献するものでなければ、戦略は一過性に終わり、携わった鉄人もまたただの売名になってしまう。
硬いシュー皮を模索するより、クリームが馴染んだクタクタなシュー皮でこそ美味しく楽しめるお菓子を考案する方がいいのではないだろうか? 現状や前例を見るに、山崎製パン「パティシエのたまご」のようなサブレ生地で覆ったシュークリームやパイシューのような表現をしないと硬い食感をコンビニシュークリームでは実現できないような気がする。
一方、もうとっくの前に店頭には並ばなくなったマルメゾン大山シェフ監修エクレールの写真を今頃になって掲載してるのは、単に出し忘れていただけだというのはさておき、比較の一つとして一緒に掲載することにした。

セブンイレブン/マルメゾン大山シェフProduce:エクレールショコラ
というわけで、このエクレールについても軽く触れておきたい。大振りで、シュー皮も割った瞬間、コンビニのエクレールにしてはなかなかイイ音がした。中はショコラクリーム。ナッツダイスを上に散らすことで、香ばしい食感を補ってある。コンビニのエクレールとしてはとても良かったと感じた。先に挙げたシュー ド ママンより、シュー皮はこちらの方が味が上だった。

こちらは残念ながらものスゴい数の「何それ聞いたことないや」的材料てんこ盛りだったが、シェフの言う通りに忠実に表現するにはこれだけの材料を使うしかなかったのだろう、きっと。知らないけど。それでも表現としてはこっちの勝ち。シュー皮しっかりしてたよ。「硬め」というなら、せめてこのくらいのレベルで表現出来てなきゃ。マルメゾン繋がりだが、そこは師の方に軍配が上がった感があった。


監修について
よくある「監修」というのがどの程度の関わりを差すのかはこの際知っておくべきかもしれない。監修というのは実際問題ピンキリだから。その多くが箔付けあるいは売名でしかない中で監修者がどれだけ商品に関わってるのか。
その道のプロに手伝ってもらって、より一層美味しくしたいというのは判らないでもない。一見近道だ。手っ取り早いし、合理的だと思う。今後の品質向上に繋がる開発という部分にまで踏み込んだものとして評価できる類の監修というのがあるなら、この場合においてだろう。この場合の監修というのはコンサルタント業というものに近いように思う。DSの「脳を鍛える」ソフトとかは、こちらに当てはまる。誰々監修、というやつだ。専門家の力が発揮されてる。
一方で、知名度がほぼゼロに近い人の創作が、市場に流通し、なおかつヒットするあるいは買ってもらいやすく、売れやすくするために名前を貸す「箔付け」としての監修がある。名前を貸すのは多くが「知名度がほぼゼロに近い人」に対する師にあたる何かしらの縁がある人物であったり、あるいはかかる分野における第一人者であったり。例えば新たな購買層に向けた商品展開をする時に真新しいブランドを立ち上げて冒険するよりも、ある確立されたブランドのコンセプトを踏襲した別レーベルとして売り出したりするのも、戦略としてはいくらか通じるものがある。監修する人物が実際の創作に対して大きく深く関わってはいないケースである。
このように、監修の中でも前者と後者とでは、明確な違いと差がある。
では、コンビニスイーツにおける監修ものは、前者と後者のどっちなのか?という話をするなら「どっちつかず」的な位置に相応しいかもしれない。どういうことかというと、コンサルタントにしては浅く感じ(実際どんなもんだろうかコンサルタントって)、セブンイレブンのシュークリームは他所のコンビニとは生地が違いますよクリームが違いますよっていう明確なプランもなく、「名前売れますよぉ」と「名前貸してもらえば、こっちも買ってもらいやすいですぅ」ということでもあったりする。このヌルさが「どっちつかず」の理由。
コンビニの一企画でしかないから、このような一過性の関わりにしかならないのは仕方ないかもしれないが、シュークリームなんてこの先もずーっと並べ続ける商品でしょうに。ここらで他所のコンビニを力一杯ブッチギってやろうぜっていうつもりがない。そこらへんがイラつかせる。
結局この場合における監修は、大抵残念な結果に終わることがほとんど。監修を請け負った職人に十分な手応え感があったのか判らないけど、名前は付いてるけども、そのパティシエがいるお店に並ぶお菓子とはおよそ別物でしかないもんな。監修したコンビニスイーツで消費者の期待を裏切るようなことになった時、店売りのお菓子の評判に影響する可能性について脳裏に一瞬よぎったりしないのだろうか。一方、セブンイレブン単体でいうなら、自社開発で十分だったじゃん的レベルの話に終わる。
今後の商品開発に役立ち、品質向上に貢献するならば、それは理想的。実際、このエクレールはコンビニ売りのものとしてはなかなか良かったし、他所のコンビニで売られているものより良かったと感じた。美味しくなったんならそれでいいだろうという意見もあるだろう、きっと。
しかし、残念ながら、それらは一過性で終わってる。発想や着眼点はいいが、後に続かない。ノウハウを蓄積していれば、今後の品質向上に表れてしかるべきであるが、期間限定の企画ものの域を決して出ることがない。その都度リセットされ、新しい商品を展開してしまう。飽きられてしまうことへの怖さ、というものなんだろうと思う。あえて定番を作らないのだろうか。だったら、復刻シリーズなんてやらないだろうな。きっとどっかで定番も大事だというのが作り手にも消費者にもあるんだと思うよ。特に今のセブンイレブンなら、そういう方向性って、大事なのかもしれん。復刻シリーズができる余裕があるなら、「定番」について一考を願いたい。なつかしシュークリームはそれに十分相応しいと思います。