
ポロネーズ:Polonaise
パリのジャン・ミエにも並んでいたポロネーズ。ジャン・ミエのはもっと尖った山型。イル・プルー・シュル・ラ・セーヌのポロネーズの方が丸みがあり、大きくてボリュームがある。下のアルミ紙と一緒に全体を引いて見ると電球のように見える。シテ駅のホームにある電燈を思い出させるような丸さ。
ムラング・イタリエンヌで覆った中にはキルシュの染みたブリオッシュ。入ってた果物、何だったろうか。パンプルムースのような色合いだった。効きがキツくなく、品のある香りで美味い。これまで東京で食べた幾つかのポロネーズの中ではベストに感じた。新たな基準になった。
ちなみに後ろはブッション。…また食っちゃった。つい選んでしまう。すでに一度掲載したことがあるので今回は控えめにポロネーズの後ろへ回ってもらった。


ポロネーズ。ポーランド風という意味になる。キルシュをたっぷり打ったブリオッシュ生地の中にフルーツを入れ、全体をメレンゲで覆うクラシックなフランス菓子。東京のパティスリーでこの白い菓子を並べてるお店は決して多くはない。パリでも滅多に見かけなかった。
ポロネーズという菓子に初めて出会ったのは、古めかしいフランス菓子のお店だった。
生まれて初めてメレンゲの鳴く声を聴いたのも同じく2006年2月、その店のポロネーズにフォークを入れた時だった。初めて食べるその真っ白な菓子の肌から、何か音を聴いた気がした。
「今……なんか言ったか?」
もう一遍フォークを入れると、やっぱりメレンゲは何か言った。
何を言ってるのか確かめたくて耳を近づけて更にもう一度フォークを入れてみると、メレンゲは確かに「鳴いて」いた。なんて言ったのかは判らなかった。でも、その声が「鳴き声」だというのだけは判った。メレンゲは鳴くのか…。その後、誰かが「メレンゲは鳴く」というようなことを本に書いていたことを知って、やっぱりメレンゲは鳴く、鳴き声を聴いたのは間違いではなかったのだと確認した。

ポロネーズと聞いて思い浮かべずにはいられない、あの頃の昼休み。
小学校時代、昼休みといえば「掃除の列の一週間」か「校庭でドッヂボールか4ピンの列の一週間」。そのどちらかしか、あの頃の「男子」にはなかった。
「お昼の、掃除の時間が、やってまいりました。皆さん、教室の隅から隅まで、綺麗に掃除しましょう」
Johann Sebastian BachのPolonaiseが校内放送のスピーカーの喋る後ろからホコリ混じりに流れ出すと、教室では逆立ちした椅子を肩車した机たちが前へ進んでは後ろへ下がり始める。小さな楽団はホウキやチリトリといった音の出ない楽器を手に取り、指揮者抜きで楽譜のない演奏を立ったまま昼休みの間中、奏で続ける。

子どもの頃からずっとサッカーばかりしてたから手で投げるより足で蹴る方がボールを上手に扱えた。いつだって下ることのない王様がいるドッヂボールよりも、下からてっぺんまで上り詰めることができる4ピンのほうが自分には楽しかった。
だが、不思議と毎日聞こえてくるこのクラシック音楽を聴きながらホウキを奏でる昼休みも悪くないと感じてた。今こうしてポロネーズのさえずりを聴きながらゆったりと過ごす時間は、とても好きだと思う。
[ Pâtisserie IL PLEUT SUR LA SEINE(パティスリー・イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ) ]
場所:東京都東京都渋谷区猿楽町17−16 代官山フォーラム2F
最寄駅:東横線「代官山」駅より徒歩6分くらい 旧山手通り沿い都立第一商業高校横
営業時間:11:30-19:30
定休日:火曜日(祝日の場合は営業、翌日が休業日)
場所:東京都東京都渋谷区猿楽町17−16 代官山フォーラム2F
最寄駅:東横線「代官山」駅より徒歩6分くらい 旧山手通り沿い都立第一商業高校横
営業時間:11:30-19:30
定休日:火曜日(祝日の場合は営業、翌日が休業日)