2010年07月23日

上馬/Boulangerie Sous le ciel de Paris パリの空の下(61):デフォルメした桃

デフォルメした桃:Tarte à la Pêche Déformant

夏らしい桃のタルト。皮付きの桃をキャソナード・キャラメリゼ。シュークル・バニエとエピスを入れ、ポアレ。シュークル・バニエは2月のマルディグラ仕様で作られたパン・オ・レザンの時にも使われたものだろうか。

デフォルメした桃:Tarte à la Pêche Déformant


更にオレンジ・リキュールでフランベしたもの。さくらんぼのクラフティの時のような柔らかいアパレイユにグリオットを散らしてある。桃は皮付きのままなので、プチッとした歯応えがかすかに得られる。アパレイユがふんわりと柔らかい口溶けで桃に合ってる。

正直に書くと、桃は昔からケーキとして食べるよりもそのままで食べるのが一番好き。もっと正直にいえば、食べずに、売場で桃のそばを通り抜け、香りを嗅ぐのが一番好きだ(笑) あれが個人的には一番桃を楽しんでる瞬間じゃないかと感じる。

桃というのは古代中国から伝わった仙果。古事記にも登場するくらい古い。火の神を産んだ後に病を煩って亡くなってしまったイザナミのみことを追って幽世(かくりよ)へ渡ったイザナギのみことが、朽ち果てた姿の妻を見てしまった。恥をかかされたイザナミは夫のイザナギを連れ戻そうと邪気を利用して後を追わせる。あまりの恐怖に逃げ帰って黄泉比良坂(よもつひらさか)まで戻って、木に実った桃を投げつけて邪気(怨霊・悪霊の類)を追い払ったエピソードがある。

そんな意味合いから、桃は悪い者を退治するとのことで「桃から産まれた桃太郎」が誕生する。桃太郎に出てくる鬼はこの日本書紀にも出てくる幽世(かくりよ)に存在する邪気の類で、あくまで虎模様のフンドシの赤鬼・青鬼が鬼が島から人里にやってきて金品・食料をせしめてゆくというのは子どもの絵本向けの「デフォルメ」である。何故「桃」なのかを辿っていけば、無用の解釈はナンセンスであるはずなのに。一頃昔、「本当は鬼は悪者じゃないんじゃないか? 悪いのは桃太郎の方では?」という説を広めようとした人たちがいるが、あれは桃太郎が太平洋戦争中に国家高揚の道具に利用された過去があるために、戦後の左翼的観点から歪んだ解釈を含ませようとした自虐史観、詭弁である。大人が子どもの絵本を悪用してはいけない。

霊験あらたかであり、エロティックでアンニュイな雰囲気を持つ桃。果実から醸し出す香しい香りは、もうそれだけでホワホワしてくる。……まあそんなわけで。

かつてピエール・エルメのタルト・モードで手を加えた桃に挫折感を覚えてからは、できるだけそのまま味わえる楽しみ方をしてきた。

しかし、今回のデフォルメした桃は美味しく味わえた。デフォルメの仕方・工夫の仕方で、美味しく味わえるかがっかりするかが分かれるところなので、とりあえず一回はあれこれ食べてみるべきなのかな、と。

[ Boulangerie Sous le ciel de Paris(ブランジュリー パリの空の下) ]

場所:東京都世田谷区上馬5-40-13
最寄駅:東急田園都市線「三軒茶屋」駅より徒歩10分。東急バス「若林3丁目」下車、徒歩1分。世田谷通り沿い、環七交差点交番の先。
営業時間:11:00-19:00(商品がなくなり次第終了)
定休日:日、月、火曜

posted by 照乃芯 at 01:54 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | パリの空の下 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月22日

特集/たまにウチで飲む時はこんな酒(1):クバ・リブレ

クバ・リブレ:Cuba Libre


クバ・リブレ:Cuba Libre

今回から始まった「特集/たまにウチで飲む時はこんな酒」(略して「たま酒」)の第一回はCuba Libre。キューバ・リブレ、あるいはクバ・リブレ。ラム酒にライムジュースを入れ、そしてコーラを注いだ飲み物。コカ・コーラ社が仕掛人と聞く。アメリカとキューバの友好の証しとして考案されたらしい飲み物。

クバ・リブレ:Cuba Libre


直前の記事でさくらんぼ(スリーズ)に5種類のスパイスを利かせたショッソンを掲載したが、この時まるでコーラのような味わいを感じるという不思議な経験をした。……そこで思いついたのがラム酒とコーラの組み合わせ。ちょっと調べてみたら、やっぱりあった。それがこのクバ・リブレ。

普段コーラは飲まないんだけど、このカクテルならコーラを美味しく味わえる気がした。逆にいえば、5種類のスパイスを利かせたスリーズとラム酒の香りという組み合わせは合うのではないだろうか? このクバ・リブレのように。

今回使ったラム酒は先日買ったHavana Club「AÑEJO 3 AÑOS」。ついこないだ生クロワッサンにもたっぷりぶっかけて堪能したハバナクラブ3年である。後で調べたらこちらもホワイトラムのようだ。ホワイトだが、かすかに金色がかった色合いをしている。

グラスは理想をいえばロンググラスが良かったが、時間の余裕もなかったので、ビアグラスで間に合わせた。

クバ・リブレ:Cuba Libre


まずロックアイスを軽く砕いてグラスに入れ、ライム・ジュースの代用にライムそのものを半分にカットし、手で搾った。ライムの玉の大きさにもよるが、1/2カットを全て搾ると一杯あたりの適量よりも多くなるかと思うので、半分の手加減で十分かと。適量は10〜20ml相当。軽くひと握程度で。残ったもう半搾り分で二杯目あるいは三杯目を楽しむと丁度いい。

ライム・ジュースを入れない「ラム・コーク」もあるらしく、ライムがない時にはラム酒+コーラでも十分イケる。

ライムの次はハバナクラブ3年(じゃなくても、もちろん可)を40〜50mlくらい入れて、その後グラスいっぱいにコカ・コーラを注いでマドラーで軽く回して完成。グラスの大きさと好みに応じてラム酒は増やしたい。今回作った量だとちょっと少なく感じたので、50mlよりもほんの少し多めがオススメ。ライムが気持ち多めだとラム酒の香りが消えてしまうのである。

クバ・リブレ:Cuba Libre


巷ではハイボールの人気が出ているようだ。ウイスキーをガス入りの水で割った飲み物。個人的にウイスキーは大学時代に悪酔いした経験があるので、軽く虎馬なのだが、まあそれならこちらはラム酒で対抗!

この記事をアップする2日前からすでに何杯か試しているが、本日も2杯ほど楽しんだ。次回もラム酒を使ったカクテルに挑戦の予定。ヒントは、コーラではなくグレープフルーツ・ジュース。
posted by 照乃芯 at 00:01 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 酒・ドリンク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月21日

上馬/Boulangerie Sous le ciel de Paris パリの空の下(60):ションソン・スリーズ・サンク・エピス

ションソン・スリーズ・サンク・エピス:Chausson aux Cerises Çinq Épices

スリーズが終わる前の、ショッソンの新作。早いもので、もう60個目の掲載。毎回、種類のたびに生地の表情がそれぞれ。5種類のエピスが入ったもので、ナツメグ、パン・ド・エピスにも使われるクローブなども入ってる。

ションソン・スリーズ・サンク・エピス:Chausson aux Cerises Çinq Épices


不覚にも断面は撮り忘れた。

時折舌先に感じられるエピスのスパイシーさと、スリーズの酸味が合わさることで、少し煮詰めたコーラに似たような味わいを感じる瞬間も。不思議な味わい。

エピスのスパイス感が、コーラの炭酸の粒が舌先に触れてプツプツっと弾ける感覚にどこか似ている。ジャムをフイユタージュとともに飲み込む瞬間の喉越しも、かすかにコーラっぽさを感じる。それこそ、この5種類のエピス入りスリーズのジャムを炭酸水に溶いて飲んだらコーラっぽく味わえるかも。

スリーズの味わいが今までとは違った角度に感じられ、スリーズが終わる前に面白い楽しみ方ができた。これをコンフィチュールにしたり、あるいはクレーム・ダマンドに合わせて、ラム酒を二倍(ダブル)に利かせたクリュも良さそうな……。コーラっぽい味わいが得られるということは、ラム酒にも合うのでは?

それをヒントにフツラフツラと考えていたら、なんとラム酒とコーラの組み合わせのカクテルが存在することを知った。知った以上、試したくなるもので、それはこの次の記事にて!

[ Boulangerie Sous le ciel de Paris(ブランジュリー パリの空の下) ]

場所:東京都世田谷区上馬5-40-13
最寄駅:東急田園都市線「三軒茶屋」駅より徒歩10分。東急バス「若林3丁目」下車、徒歩1分。世田谷通り沿い、環七交差点交番の先。
営業時間:11:00-19:00(商品がなくなり次第終了)
定休日:日、月、火曜

posted by 照乃芯 at 23:40 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | パリの空の下 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月20日

青森八戸/たちばな:ばたぁせんべい、しろせんべい

青森八戸/たちばな:ばたぁせんべい、しろせんべい


年に一度あるかないかの和菓子ネタ。八戸名物、ばたぁせんべいをいただいた。「ばたぁせんべい」「しろせんべい」の2種。バターの風味を損なわないために、とても薄く焼かれた煎餅はところどころ不揃いのイイ表情を見せる。

青森八戸/たちばな:ばたぁせんべい、しろせんべい


煎餅っぽさを感じる瞬間もありつつ味わったパン・グリエ・ノワ・エ・フリュイ・セックとは打ってかわって、この「ばたぁせんべい」は煎餅なのにまるでバケットのクラストのような味わいに感じられる瞬間がある。

エンボス加工で「南部名物」と書かれている。サインペンで手書きで「しろせんべい」って書かれてるとこがいい。

青森八戸/たちばな:ばたぁせんべい、しろせんべい


「ばたぁせんべい」は中央に黒ごまが。柔らかい微かなバター(ばたぁ)の甘さが。東京で食べる煎餅は醤油を塗って焼いたモコモコした凹凸にゴリゴリした食感のうるち米煎餅ものだったり、鎌倉の小町通りに行くとシットリした濡れ煎餅があったりするが、まるで違った煎餅。米を使った煎餅というよりも麦に近いような。

青森八戸/たちばな:ばたぁせんべい、しろせんべい


「しろせんべい」の方は、東京でいうソース煎餅のような味に近いかも知れない。バケットのクラストだけ食べてる感じ。噛んでるうちに塩気のようなものを感じ、煎餅を齧ってるはずのなに食べ終わるや否やバケットを食べたような感覚に陥る。

この煎餅は、上に何かソースやジャムを載せて食べても美味しそうな気がする。

青森八戸/たちばな:ばたぁせんべい、しろせんべい


……というわけで、やってみた。

なんか、いい。特に「ばたぁせんべい」にジャムをかけて食べた時がいい。選んだのは、残り僅かしか残っていなかったミルティーユのコンフィチュール。

青森八戸/たちばな:ばたぁせんべい、しろせんべい


バター(ばたぁ)の甘さと煎餅の香ばしさがミルティーユのジャムと合ってる。黒ごまの香りも後から追いかけてくる。最後はサンドして食べた。美味い!これが一番良かった。

青森八戸/たちばな:ばたぁせんべい、しろせんべい
タグ:煎餅
posted by 照乃芯 at 00:24 | パリ | Comment(2) | TrackBack(0) | 和菓子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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