2010年04月13日

自由が丘/ORIGINES CACAO(10):フレジエ、シシリア

フレジエ:Fraisier

3月に食べたもの。一緒に撮った苺は別に全く同じものではなく、たまたま冷蔵庫にあった紅ほっぺを使っただけ。

Fraisier


東京で食べられるフレジエとしては、ほぼ一般的なルックスと色調といっていい外観であり、がムスリーヌであるかクレーム・オ・ブールであるかの違いは店によってあるものの、ほぼこういったテイストが東京のフレジエとして流通しているのを見てきた。もちろん、そうでないものもあるだろう。食べてみるべきフレジエが幾つかありそうだと、最近感じる。

やはり今回も上品すぎる印象。今までいくつか食べてきたが、「高級感」とは味わいまで控えめにするものなのだろうか。もちろんこれがその店の表現だと言われればそれまでだが、正直いうと「もの足りない」。「パンチが足りない」というのは、この気持ちを表現するには妥当ではない気がする。パンチというのではなくて……何と言えばいいだろうか。アンサンブルに多くの比重が置かれていて、個性のぶつかり合いがないというか。あくまで一個人の食後の感想なので、どう感じるかは人それぞれ。

苺の香りが広がって行かないし、キュッと締まった筐体が味わいの大きさまで制限してるかのような物足りなさ。この品の良さはアリキャンテ辺りだと割とハマってていいのだが。

今までショコラトゥリーで専門外とも言えなくもないショコラ以外のプチガトーをあちこちで食べてきたが、どうにもこの店の表現は保守的過ぎる印象が。その代わり非常に繊細な味わいに出会うことがある。とはいえ、あまりにも物足りなさ過ぎる。単に自分との相性の問題なのかな。

origines_cacao_cicilia.jpg


シシリア:Cicilia

ピスターシュを使ったボンボンショコラ。ショコラティエのピスターシュ使いについて、もう一度確かめてみたく、食べてみた。東京の特徴なのか、全世界的に言えることなのかは判らないが、ショコラティエのピスターシュ使いは、パティシエの表現とは違って、もっと豆々しい感じ。ビターアーモンドエッセンスを効かせたキレのあるピスターシュ使いをするショコラティエには、東京ではまだ出会ったことが、残念ながら無い。

ショコラのアロマとのバランスに気を使う以前に、ピスターシュの鮮度が良くない。中のクリームが古くなった味わいがする。気のせいだろうか。

ピスターシュを使ってるプチガトーのアリキャンテはとてもいいまとまりと落ち着き具合で、品の良さがマッチしているのに、ボンボンショコラでは、食感が劣って感じられた。素朴が悪いという趣旨ではなく、日を置いたような、劣化した味わいを覚えた。ショコラトゥリーなのだからボンボンショコラで味を見るのは当然だろうと思うのだけど、どう解釈したらよいのだろう。

ORIGINES CACAO(オリジンーヌ・カカオ)

住所:東京都目黒区緑が丘2-25-7 ラ・クール自由が丘2F
最寄駅:東急東横線「自由が丘」駅南口下車、徒歩3分前後
営業時間:10:30-19:30(L.O. 18:30)
イートイン:可(5席)
定休日:不定休

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2010年04月12日

上馬/Boulangerie Sous le ciel de Paris パリの空の下(24):カヌレ・ド・ボルドー

カヌレ・ド・ボルドー:Cannelé de Bordeaux

これが初めてではないが、再び食した。シェフが再現したボルドーのカヌレ。前回は一週間前だったが、薄曇りの空の下でサクッと撮影したため、見事に撃沈。記事だけは少し書いた上で、先週末に再挑戦した。

Cannelé de Bordeaux


お店によっていろんな名前を付けていたりする。カヌレ・ド・サンテミリオンや、カヌレ・ド・ジロンドだとか。日本でブームになったのは1990年代と聞く。ブームが終わってきっとしばらく人の心から遠ざかったのだろうか。パティスリーが増えるようになってから、このカヌレは次第にお店で見かけられるように。どこのお店でも置いてあるわけではないが、あればよく買っていたお菓子の一つ。

Cannelé de Bordeaux


最初の一口の食感がいい。カリッとした食感はこれまでのカヌレに対する感覚とは違ったもので、表面の焼き加減というか食感は東京にあるカヌレでいえばPAULのカヌレを想定してもらえれば判りやすいかも知れない。あれに近いように感じた。

Cannelé de Bordeaux


それ以外のブランジュリーやパティスリーに並ぶカヌレはもっと硬く、ガリッとしている。ネッチリ感も、より上がってた。当然、皮の味わいも幾分苦い。外側の「濃さ」の主張があって、中の生地に対する感じ方で差異を感じられるということは、実はあまりなかった。それ以外の判断材料は香りだろう。ラムやバニラの利きの強さ加減。

Cannelé de Bordeaux


ブランジュリーで食べられるものの方が食べやすい食感という印象がある。ビゴの店のカヌレもそうだった。パティスリーで並ぶカヌレの方が硬めに感じることが多かったな。例外的な食感に出会ったのはオー・プティ・グルマンとミラベルくらいだったろうか。

特にオー・プティ・グルマンのカヌレは食感が良く、香ばしいバゲットを齧るような小気味良い歯応えが味わえる食感だったと記憶している。

Cannelé de Bordeaux


中の生地はバニラとラムの香り。バニラが強く香るのは、パリの空の下の、一つのフレーズになってる。

今まで食べてきたカヌレはとてもネッチリしていたが、このカヌレはもう少しでトロっといきそうなくらい滑らかな口溶けがある。まあ実際は、言葉ほど柔らかいわけではないが、こういった食感はカヌレ好きの人でもあまり経験がないかもしれないと感じた。前回食べた時よりは今回の方がほんの僅かにネッチリさが上がっているようにも感じられたが、感じ方の範囲かもしれない。歯にくっ付かないバランス加減が、このお店のカヌレの食べやすさ。

[ Boulangerie Sous le ciel de Paris(ブランジュリー パリの空の下) ]

場所:東京都世田谷区上馬5-40-13
最寄駅:東急田園都市線「三軒茶屋」駅より徒歩10分。東急バス「若林3丁目」下車、徒歩1分。世田谷通り沿い、環七交差点交番の先。
営業時間:11:00-19:00(商品がなくなり次第終了)
定休日:日、月、火曜(4月からは完全週休3日へ)

タグ:カヌレ
posted by 照乃芯 at 00:54 | Comment(6) | TrackBack(0) | パリの空の下 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月11日

上馬/Boulangerie Sous le ciel de Paris パリの空の下(23):フィナンシエ

フィナンシエ:Financier

焼きたての剥き出し販売によるもの。ついに解禁した。一年振りのフィナンシエ。

Financier


カリッとしたヘアライン、しっとりした食感に、風味豊かなアマンドの香り。今まで食べて来たフィナンシエの中で最もアマンドの香りが強い。というか、今までなかったな、これは。また「初めて」か……。香りだとか、ジュワッとした味わいだとか、とにかくバターに重点が置かれてきた気がする。違いがあったとすれば、アーモンドプードルをふんだんに使用しているか、焦がしバターか溶かしバターか。袋に入れっぱなしでべったりし過ぎて噛む意欲を減退させたり、「こういうもんだ、納得しろ」と説き伏せられようとしているかのようなあまりにもどれも差がないものばかりであったり。

Financier


フィナンシエを解禁するとしたらパリの空の下しかないとは思ってたが、正直にいえば不安だった。自分の中の不安。「ここでもない、あそこでもない」とこの街で不毛なことを繰り返してると自責の念を抱いて封印しただけに、また頭の中のフィナンシエが現れてしまいそうで、どこの店に行っても、見ないフリを決め込んでいたこの一年。ゆえに今日まで、この店のフィナンシエでさえ見て見ぬフリをしてきた。


カリッと感も全く問題ない。理想的。このカリッと感が得られる場合、全体的にカリカリし過ぎることが多かったし、ヘアラインが硬過ぎたりもした。その逆ならベタッとした表面に柔らか過ぎる食感。良くいえばシットリ。このように、針がいつもどちらかに大きく振れてしまう。両方を兼ね備えたフィナンシエが見つからなかった。どちらかが好みならしっくり来るものは割と無理なく早く見つかると思うが。

しかし、自分にとってそれでは針が振れ過ぎてると感じて食べ比べをしてこなければならなかった以上、きちんとストーンがサークルに留まってくれるベストショットが欲しかった。「……少し届かない」「……ちょっと行き過ぎた」自分の中のモヤモヤはまるでカーリングのようだった。すべては袋売りに問題があるように感じてた。そのくらい、袋マドレーヌや袋フィナンシエの中には、無念を禁じ得ない瞬間がこれまで確かにあった。具体的にどことは書かない。

この高温多湿の街で剥き出しで販売する店は限られている。同じ条件で食べ比べなければ公正ではないけど、剥き出し販売してる店はこの街にはほとんど見られなかった。事実、剥き出しで売る店のそれは、いかんせん乾き過ぎてた。火が入り過ぎてる。ヘアラインが口の中で美味しさを邪魔しかねない硬さになってしまっていた。これまで何度も食べたのちに断念した。一方、袋売りの状態を店の外に出して販売する店にも出会ったことがあったが、この味わいの場合は論外だった。あれはただ時化てただけの劣化ものでしかなかった。売り物として並べるべきでないと客側から見て感じたほど。

きっとこの街で剥き出しのまま閉店まで並べれば、ライフは確実に短くなってしまう。だが、ベストの状態で食べてみたい。そう思った。

そんな風にして、いくつものフィナンシエを食べ比べしてきて、「これは、いかん。このままじゃ何やってんのか判らなくなる」と感じて、食べ比べを中止したのは一年くらい前だったか。仮にどこか遠くのお店に理想のフィナンシエがあったとしても、生活圏内でなければどうしようもない。日常の中にないなら、もはやそれは自分の能書きでしかなくなる。自分で作る? 道具が必要だ。時間が必要だ。技術が必要だ。他にもいくらでも時間の過ごし方を持ってる以上、貴重な週末の余暇をお菓子作りのためだけに割き続けられない。それを短縮するための購入だから。「売ってるもので見当たらないならもう、よそう」と思った。そこそこで良しとしよう。完璧など……。

だが、そこそこって言っても、なかなかそこそこで納得するわけもなく。
まさか解禁するとは思わなかった。

しいて言うなら、僕は食べ手として公正に判断がしたくて、できればどこのパティスリーやブランジュリーでも、マドレーヌやフィナンシエは剥き出し販売にしてくれたら……と今でも思ってる。「そうは言われてもさ……」と思われたとしても、袋に入れた状態で条件やコンディションを統一するのではなく、剥き出しで。それで判断してみたいと2年くらい前から意識し始めた。

袋に入った状態のマドレーヌやフィナンシエのベタついた手触りや、ただシットリとしただけの生地。食後にそんな本音を持ったとしても、何よりブログのネタ稼ぎで選んでる風な自分が嫌だった(苦笑)

無論「食べてみなきゃ判らない」が自分の動機や好奇心の原動力だったから、苦ではないにせよ想像を超えるものに出会うことなど既に期待していない自分がいることを次第に自覚しつつある日々の中で、マドレーヌやフィナンシエに対する動機が徐々に薄れていった。極上って一体何だろう?と。本当にそれを求めてるのか自分は、と。自問する日々だった。その自問とは、裏を返せばつまり「いまだもって見つからない」だった。「そのうち見つかる」は気を楽にしてくれる。だが、いつまで「見つからない」をキープしなきゃいけないんだろう。そのうち自分が何を求めてるのかさえ判らなくなるのが一番怖かった。

そうしなくてもいい場所が見つかった。過去の記憶を辿れば、僅かであっても「良い」と感じるフィナンシエがあった。どうしても見つからないなら、そこにしてもいいのでは?と感じたこともあった。

帰結するとしたら、おそらくもう自分にはここしかないだろう。

一つだけやり残してるとすれば、最後に確かめなくては。

此処ではない、この空の向こうで、確かめる必要がある。

[ Boulangerie Sous le ciel de Paris(ブランジュリー パリの空の下) ]

場所:東京都世田谷区上馬5-40-13
最寄駅:東急田園都市線「三軒茶屋」駅より徒歩10分。東急バス「若林3丁目」下車、徒歩1分。世田谷通り沿い、環七交差点交番の先。
営業時間:11:00-19:00(商品がなくなり次第終了)
定休日:日、月、火曜(4月からは完全週休3日へ)

posted by 照乃芯 at 01:56 | Comment(10) | TrackBack(0) | パリの空の下 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月10日

上馬/Boulangerie Sous le ciel de Paris パリの空の下(22):フレジエ(長崎さちのかバージョン)

フレジエ:Fraisier - sachinoka -

4月に入ってから食べた二度目のフレジエは、長崎さちのかを使用したバージョン。甘い爽やかな香りが立ちこめて、さっさと写真を撮れ、撮ったらさっさと食えとせがんでくる。ほんの少し小さくなったとはいうものの、大きな変化は見られず、正方形に近かった縦横比が若干変わった程度に見受けられる。

Fraisier


クレーム・ムスリーヌと大きな苺を挟むジェノワーズ・オ・ザマンドとの比率は決して厚過ぎるなどというものではなく、ジェノワーズ・オ・ザマンドのこの厚さに対するムスリーヌと苺のバランスはマイナスに針が振れると言うようなものではなかった。むしろ、これでいい。

ジェノワーズ・オ・ザマンドであるから、アマンドを入れて焼けば多少はボソッとした食感になるのではないだろうか。いわゆる洋菓子的な生地を感じさせない方向性のアプローチからなるジェノワーズとは異なる。きっと食べ手の、生地の食感に対する求め方の違いなのだろう。このフレジエはあくまでフランス菓子好き向けである。

クレーム・ムスリーヌは相変わらずバニラの香りが主体で、そこに寄り添う程度に香るピスターシュ。三月に初めて食べた時のクレーム・ムスリーヌよりもわずかに余韻にキレが上がっているように感じた。マリネした苺とムスリーヌのコントラストが若干上がって感じられた。先月食べた時も、今回も美味しい。

苺の季節が終わってしまう前にあともう少し、食べる機会を設けたいな。足を運べない間に幾つか興味をそそられるアレンジのフレジエが並んだようだ。

[ Boulangerie Sous le ciel de Paris(ブランジュリー パリの空の下) ]

場所:東京都世田谷区上馬5-40-13
最寄駅:東急田園都市線「三軒茶屋」駅より徒歩10分。東急バス「若林3丁目」下車、徒歩1分。世田谷通り沿い、環七交差点交番の先。
営業時間:11:00-19:00(商品がなくなり次第終了)
定休日:日、月、火曜(4月からは完全週休3日へ)

posted by 照乃芯 at 01:06 | Comment(7) | TrackBack(0) | パリの空の下 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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