2010年01月15日

上馬/Boulangerie Sous le ciel de Paris パリの空の下(6):タルト・タタン

タルト・タタン:Tarte Tatin

パリの空の下で前回買った分の残りの一つはタルト・タタン。季節ものを選んだ。こちらのタルト・タタンは巴シェフが以前青森で開いていたロゼ・コローレのものにルックスが似ているように見える(食べたわけではなく、シェフのブログから辿れるロゼ・コローレのお菓子紹介のページを見て)。

Tarte Tatin


滑らかなほぼペースト状の林檎のコンポートになっている。敷き込みパイ生地に林檎のコンポート。パリの空の下のタルト・タタンはとてもはっきりと酸味の感じられる味で酸っぱくって美味い。林檎を生でかじって感じられる酸味を損なわずに表現したら、きっとこんな感じになるのだろう。

初めて見る人はまずここに驚かされると思う。なにせ一般的なイメージはキャラメリゼしてある褐色のタルト・タタン。色も味わいも、表現のアプローチはまるで違う。少なくとも自分が今まで東京で見かけて食べてきたタルト・タタンとはまるで違うルックスと味わい。だが、林檎のタルトとしては、物凄く酸味が伝わってくる。きっとシェフの故郷である青森の林檎なのだろうと思うが、その林檎の美味さを伝えるにはこの作り方が一番ハマるということなのだろう。

もしタルト・タタンにショートプログラム(規定演技)があるとするなら、この段階で食べる人の審査点は大きく割れるのではないだろうか。しかし、フリースタイル(自由演技)として見た場合、素晴らしいと感じた。あくまでショートプログラムとして見たい人にとってはフリースタイルに進むことはないかも知れないタルト・タタン。林檎の酸味をしっかり表現した新しい風を味わいたい人にはオススメ。

[ Boulangerie Sous le ciel de Paris(ブランジュリー パリの空の下) ]

場所:東京都世田谷区上馬5-40-13
最寄駅:東急田園都市線「三軒茶屋」駅より徒歩10分。東急バス「若林3丁目」下車、徒歩1分。世田谷通り沿い、環七交差点交番の先。
営業時間:11:00-19:00(商品がなくなり次第終了)
定休日:日、月曜(3月は火曜も休みがありますが、4月からは完全週休3日へ)

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2010年01月14日

目白/Aigre Douce(92):冬のケーク・オー・フリュイ

冬のケーク・オー・フリュイ:Cake aux Fruits d'Hiver

去年11月に食べた冬バージョンのケーク・オー・フリュイ。1600円。苺、いちじく、レーズン、木苺、ブルーベリーなどがトッピングされたもので、どれもドライフルーツ。冬らしい雰囲気が漂う。ようやく東京も冬らしくなったので、タイミングを合わせて掲載した。

Cake aux Fruits


11月にはすでにショーケースに並んでいたから、冬のケーク・オー・フリュイが並ぶのは11月頃からと考えていいと思う。「冬しか逢えない」というのは、大好物の明治製菓『ポルテ』のかつてのCMキャッチコピーだったが、今はほぼ同じキャッチコピーが『ホルン』に使われている。数日前にその二つを食べたので、ふと書いておきたくなった。

Cake aux Fruits


おそらくエーグルドゥースのケークの中で季節バージョンがあるのはこのケーク・オー・フリュイだけかもしれない。生地の上面片側にはシュガーパウダーを振ったアーモンドスライスが並んでる。エーグルドゥースではよく見るアレンジ。ココアパウダーでほんのり褐色に色づいている生地には軽くシナモンの風味が。通年のケーク・オー・フリュイよりもこっちの冬バージョンの方が見栄えも味も気に入ってしまった。

Cake aux Fruits


シナモンに限らず、スパイシーなフレーバーをチョコに合わせる、例えばコショウをチョコに合わせるというのはピエール・エルメに見られる合わせ方としてお菓子好きの人も知ってる方が多いと思う。

そして、今年2010年の『サロン・デュ・ショコラ』(新宿伊勢丹にて1月27日水曜日〜2月1日月曜日、本館6階催物場にて開催)ではコンフィチュールの妖精クリスティーヌ・フェルベールが今年はコショウを使ったショコラを出品するという。アルザスではこういう組み合わせをするのだとか。……どうりでピエール・エルメがコショウを使うわけだ。かつてガストン・ルノートルに怒られたというコショウ使いのショコラのルーツは生まれ故郷のアルザスに。

ピエール・エルメは(古典のブラッシュアップも含めて)伝統的な仕事をする一方で奇抜なアイディアを表現する側面もある印象の天才的職人だが、あらゆる創作は突拍子もないところからイメージされたわけではなく、育った郷土の慣習を生かした結果だったということになる。そういえばバニラ使いもフェティッシュでよく見られるが、あれもアルザス的のようだし。

つまり、スパイシーな風味とショコラ(あるいはカカオというべきか)の組み合わせはアルザス的と考えられる。エーグルドゥースは常々パリというよりきっとアルザスなお店なんだろうなと心の隅で感じてきたけど、ケーク・ア・ラ・ヴァニーユが出たあたりから僕の中で感じられ始めたエーグルドゥースのバニラ使いを始めたことにおけるピエール・エルメっぽさは、やはりエルメというよりもアルザス的だということだろう。

去年の春にはキャネル・フレーズという、これもまたシナモンとチョコの組み合わせからなるケーキを食べた。秋から冬にかけてトルシュ・オ・マロンが作られるところも、ショーケース上に常にクグロフが置いてあるところも、やはりどこかアルザスだ。店の外観は淡い緑に塗り替えればラデュレのボナパルト店っぽく見えるけども、精神的にはアルザスなんじゃないかと、僕は感じてる。パリでもアルザスでも、修業した場所の思いが出てるのはイイなと思う。

Cake aux Fruits


さて訪問当初はケーク・パン・デピスを買いたいと思っていたのが、その時にはなかったのでこの「冬のケーク・オー・フリュイ」のみの購入にとどめた。クグロフもショコラ以外にもう一種類フレーズ風味があったような気がしたが、見つからなかった。いつ見たんだったっけ。冬か春に見たような記憶がある。今度行った時の楽しみにしよう。

それにしても、相変わらずエーグルドゥースのケークは華がある。パウンドケーキがこれほど主力商品なお店もなかなか見当たらない。これだけ気軽に一本買わせるというのはすごいことだ。

[ Aigre Douce(エーグルドゥース)*参考サイトです ]

場所:東京都新宿区下落合3-22-13
最寄駅:JR山手線「目白」駅より徒歩5〜6分
営業時間:10:00-19:00
定休日:水曜日(祝日の場合は翌日休業)

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2010年01月13日

東玉川/PÂTISSERIE Le temps des Cerises(5):ガトー・フレーズ

ガトー・フレーズ:Gâteau Fraise

スポンジにはそれぞれ苺のシロップが打ってある。いい口溶けのスポンジ。最初は選ぶ予定にはなかったケーキ。というのも、目当てにしていた生菓子の幾つかが売り切れあるいは季節の関係からか並んでいなかったため。

le_temps_des_cerises_gateau_fraise.jpg


食べたのは去年12月初旬。今回のスイーツ男子会議第三回『ショートケーキ』には参加していないけど、せっかくなんでショートケーキを。もし仮に参加していたら、このガトー・フレーズか、イル・プルー・シュル・ラ・セーヌの「苺のショートケーキ」か、エーグルドゥースのシャンティー・フレーズあたりを選んでいたかも知れない。

le_temps_des_cerises_gateau_fraise2.jpg


フランス菓子に精神的ウェイトを置いてる店にもいわゆるショートケーキが並んでいることはあって、個人的には「特別枠」のようなものとして受け止めているが、フランス菓子屋の看板を掲げる店の場合、スポンジにはシロップを打ってあることが比較的多い。

スポンジにシロップを打つのは何も乾きを防ぐためではなく、生地の味わい方として味にプラスになるから打たれているのであって、生地を味わうための多様性。一方、日本的洋菓子のショートケーキは口溶けの追求ひいては生地を感じさせないという方向性は確実にあり、それを理想像として目指してさえいる。

だが、米粉を使ってみるとか、ショートケーキを砕いて(あるいは分解して)ヴェリーヌにするとか、正直な気持ち「表現の行き詰まり」を幾らか覚える。プレゼンテーションにはなってるが、「新しい」といっていいクリエイティビティだとは感じない。これらの変遷は「口溶けの追求」という理想像に向かって一見正しい進化の道を歩いてはいるが、そこまでいった時に必ず表現は行き詰まる。もはやケーキではなくなってしまうのは目に見えてるから。何かしかるべき方向付けはできないものなんだろうか。このまま「口溶けの追求」でいいのだろうか。

僕はフランス菓子寄りな味の突き詰め方の方が好みだから、「口溶けの追求」という日本的洋菓子ショートケーキへの理想像に向かうアプローチはより一層洗練されていくのだろうと思う反面、ショートケーキが並んでいても、食べるならできるだけフランス菓子に近づけようと一工夫してある方を好んで選択するようになった。同じ一工夫でも、フランス菓子的な「生地を味わう」一工夫に今後も傾倒したい。理由は後述。

[ PÂTISSERIE Le temps des Cerises(パティスリー ル・タン・デ・スリーズ) ]

場所:東京都世田谷区東玉川1-16-19
最寄駅:東急池上線「石川台」駅より徒歩5〜6分。
営業時間:9:30-19:30
定休日:不定休

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2010年01月12日

白金台/À CÔTÉ Pâtisserie(14):ポワトゥー

ポワトゥー:Poitou

外側のタルト生地の中はクリームチーズ風味のスフレ生地に、赤すぐりのジュレが入っている。上面にはシュガーパウダー。ホッとする系の焼き菓子というべきか。フランス西部のポワトゥー・シャラント地方にちなんだチーズのお菓子。

Poitou


チーズの味はそれほど強いわけではなく、優しい味わい。こちらのお菓子は去年食べた分で、上げ忘れの一つ。このポワトゥー・シャラント地方にのチーズの菓子で浮かぶのはトゥルトー・フロマージュ。黒いチーズケーキだ。都内ではおそらく尾山台のオーボンヴュータンか下馬のアルティザン・テラぐらいにしか置いてないのではないだろうか。

Poitou


しかし、まあ渋い!
去年も書いたけど、やっぱりア コテ パティスリーを好きなお店に挙げられる人っていうのは、どこかマニアックな素質があると思うな。良さがシンプルであればシンプルであるほど、興味や理解を示す人の素質・志向はマニアックだというのが僕の持論。意識的・無意識的に関わらず。

シンプルというのは、単純明快であるが、それを突き詰めるとかえって良さが伝わりにくくなることがある。「だがそれがいい」とそれを強いて好む人はマニアックだと、僕はどちらかというと好意的に受け止めてる。

[ À CÔTÉ Pâtisserie(ア コテ パティスリー) ]

場所:東京都港区白金台2-5-11
最寄駅:都営三田線・東京メトロ南北線「白金台」駅より徒歩5〜6分ほど
営業時間:9:30-13:00/15:00-19:00(13:00〜15:00は仕込み時間のため、一時閉店)
定休日:不定休

posted by 照乃芯 at 00:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | ア コテ パティスリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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