フィナンシエ:Financier@240円このフィナンシエに出会ったのは、今年の冬のこと。
写真は今年4月の上旬に代々木公園で撮ったもの。
240円。この価格で3つ入り。小振りでは、ない。どこで買えるフィナンシエにも変わらない大きさ。深い焼き色、やや薄めの金塊型。表情がいい。表面はしっかり硬さがありつつ、中は弾力感がある。バターの香りもよく、不足なく染みてる。
このバターの香りが、カタネに通い始めた頃に覚えた"匂い"。今にしてショーケースに目をやると、実に種類が増えた。地下にはカフェもできた。その中で、このバターの香りだけが、初めてこの小さなベーカリーに来たあの頃と何も変わらない。
甘さ加減も実にカタネらしい。いつも食べるカタネの、よく見知った甘さ加減がこのフィナンシエにも感じられる。
外のエッジの部分がカリカリなのがすごくいい。もっちりした中の食感とカリカリサクサクしたエッジの食感が口の中で溶け合い、混じり合い、絡み合う。素晴らしい。大抵、表面をこれだけカリっと焼けば、より乾かす分、中のもっちり感やバターの風味が犠牲になるのではないだろうか。
ゆえにフィナンシエを手に取る時、「カリっと感」をとるか、「じっとりもっちり感」をとるか、二者択一をこれまでの食べ比べでしてきたように思う。追い求めてきた「両方ある」フィナンシエには、惜しくも今まで出会ったことはなかった。
日によってこのカリカリ感は多少違うこともあるのだが、それでもこういうフィナンシエは今までパティスリー巡りをしていて一度も食べたことがないバランス。窯、オーブンが違うのだろうか。この食感に似た、あるいは近い領域に達していたかもしれないものに出会った経験なら数度はあったかもしれないが、ここまでではなかった。これは…今まで食べたフィナンシエの歴代ベストかもしれん。
まさか、こういうカラクリだったとは。
何年もかけて散々あちこちの「ケーキ屋」を食べ歩いた途中に見つけた理想のフィナンシエが、
これまでずっと通い続けていた地元の「パン屋」にあったなんて。
気が済んだ。
自分が求めていたフィナンシエはこれだと、判った。
歩いて5分の場所に、240円で3つも食べられる一番美味しかったフィナンシエがある以上、
もう他所の町へ買いに行くことができそうにない。他のお菓子に関してはそういうわけにはいかないけども。
半年後:2009年10月末もうフィナンシエの食べ比べは封印したはずだった。このカタネのフィナンシエのバター感とエッジのガリガリ感、そしてヴィロンのフィナンシエが合わさったものが自分の探してた至高のフィナンシエ。そう思っていた。
ところが、東京・丸の内にエシレ・メゾン・デュ・ブールが出来た。エシレバターを好きなだけ使ってパンや焼き菓子、生菓子が作れる贅沢なお店だ。作ってるのはヴィロンの職人だから、モノはヴィロンだと思っていい。粉もおそらくヴィロン社だろう。ヴィロンのエクストラバージョンとでもいうべきか。食べる前から「美味い」だろうと思うのは当然の予測だが、それがどれだけのインパクトかを、いっぺん確かめておきたい。
まあ、これは一度食べておくべきなんだろうと思わずにはいられなかった。
最終的な判断はエシレ・メゾン・デュ・ブールのフィナンシエを食べた後にしようと思う。