あまり目立たない場所にあり、思ってたより小さいなと感じたそのイデミに入った瞬間、予想通りの光景を目の当たりにした。噂通り、ほぼすべての生ケーキが売り切れ。イートイン用のカップデザートが1種類の他、テイクアウトできるエベレストだけが一列残っているという有様。結局、エベレストだけを二つ買っていった。もっと高い買い物をしてゆくと思ってたのに、結局たったの1060円。店員さんによれば「午後の補充もなし」との事。…ないんだ。ほんとに?(苦笑)
自分の後に入ってきた背の高い男性は、ただ困って苦笑いするだけ。店を出て写真を撮った後に自転車で駆け付けてきた女の子は何か買っていったんだろうか。
とりあえず、本当にお昼頃行くと焼き菓子以外何もないっていうのだけは確認できた。冷静に考えるとすごい光景だ。お昼でほぼ完売なのに、補充なしっていうのも、すごい。
というわけでひとまず中央通りに出た。まあ、ブラブラと。これが銀ブラってやつか。ほんとにブラブラしただけだったよ。さすがにイデミの袋持ったままダロワイヨに入るつもりはなかった。ただの冷やかしになっちゃうし。
通りをまっすぐ進むと先に人だかりが出来てた。
福家書店前は若い女の子でごった返し。どうやら小池徹平が来るとの事。すごい数の人だった。小池徹平が来るんなら不思議じゃないな。可愛いよ、男のオレから見ても。可愛い弟って感じ。小遣いあげたくなるくらいだ(笑)
実は銀座ってあまり好きじゃなかった。落ち着いてしまった街、アガった街という感じがして。どーゆーわけか、10〜20代前半まであれだけ毛嫌いしてた地元の渋谷が、27歳くらいから妙に自然と歩けるようになった。相変わらず美観もへったくれもない汚い街だなって思うけど、あの混沌はすごくアリだなって思えるようになった。
でも、今日は銀座を歩くと少し落ち着けた気分になれた。今は一人でいたくないから。帰りの電車とかも、混んでるとこをわざわざ乗る。雑踏や人混みの中に埋もれている方が、部屋で一人で過ごすよりもずっと平静を保っていられるから。
一人でいる事がこんなに寂しい事だとは知らなかった。
海や公園に風景写真を撮りに出かけてる時とかは一人の方が気楽でよかったし、寂しいだなんて思った事もなかった。美しい風景や景色に身を置き、見ず知らずの人の暖かさに触れ、自分が誰かのスナップを撮ってあげたり、自分の写真を見てもらう事で自分が誰かのためにちょっとだけ役立ててるんだって思ったら、ちっとも寂しいとは考えなかった。自分がそこにいるって思えてた。
でも、今は違うみたいだ。金曜日の夜に渋谷HAMMOCK、土曜日はイナムラ・ショウゾウ、そして今日はイデミ・スギノ。この一年、好きで続けてきたケーキ屋巡り。いつも感動したり驚かせてくれたり、ほっとさせてくれてたはずのケーキ。今は何個食べてもほっとできない。週末にケーキ屋へ繰り出したりしているだけで楽しかったのに。
海へは当分行けそうにない。海のいいとこ。風も雲も波も潮の香りも、ただそこに在るだけ。それ以上を求めたりなんかしない。何も言わないし、何も言ってくれない。それでよかった。でも、それが今の自分には辛い。切なすぎる。
切ないテーマの写真ばっかり6年も撮り続けてきた。でも、そうしていられたのは、実は自分が「切ない」から十分距離を置いていたからなんじゃないかと感じる。今その「切ない」は自分の膝の上にある。これじゃシャッターは切れないし、ファインダーも覗けない。雲がそこにあるだけで、遠くにあるそれにレンズを向けるだけでどうして満足できなかったんだろう。今自分はその雲を何とか掴もうとあがいてる。
何も聞けなかった。結局何処に住んでるのかも、メアドも、そういう事何にも知らないまま、見送ってしまった。なのに、もう逢えないとわかったら、急にいてもたってもいられなくなった。
ほんと雲を掴むような話だ。エベレストを二つ縦に重ねても届かないかも。