サロン・ド・テ・スリジェで買ったケーキの最後はチョコ系。シャンティーとカスタード、生地を愉しむ2品と、夏場でも味わえる栗系、ムース系。今回は万遍なく選びました。スリジェのケーキはとても良い材料を使い、上品に仕上げたケーキという印象です。ほとんどハズレがなく、どれを選んでも一定以上のレベルのケーキを食べる事ができるのではないでしょうか。
そして、外観がとても絵画的な佇まいであるという点。以前、NTV『どっちの料理ショー』のデザート対決に
鎧塚シェフと出ていた時に、ケーキ(の新作)を作る時にはキャンバスに向かわれるという映像を見て、それを思い出してなるほど合点が行きました。確かに絵画的な佇まいなんです。絵としてまず美しい。お皿に盛られたり、乗せられた状態を含めての存在感があるというか。今回のようにテーブルに直接置くのではなく、例えば白いお皿に乗せた時に、スリジェのケーキの美しさがより際立つと思います。大体のケーキはそういうものかも知れませんが…。
こういうアプローチに関しては、自分は基本的に賛成です。出す解へのアプローチには論理的な側面もあるでしょうが、芸術的側面も重要でしょう。ケーキであるゆえに。実は結構手が込んだ味付けを随所に施しているのだけど、見た目の無駄の無さからは想像できないものがありますね。モンブランの側面にあったチョコプレートは正直不要じゃないかとは思いましたが(笑)
ただ、品良くまとまり過ぎてる感もあるにはあります(自分にはそういう印象がありました)。一つだけものすごくトンガってるといったようなケーキもなく、飾っておけるような感じのものばかり。それらも含めて絵画的なんですが、味は上々です。絵に描いた餅ではなく、キャンバスからちゃんと出てきています。飛び出すケーキです(笑)
ですから、後ひとつ。何かいい意味での「裏切り・背徳」が欲しいですね。ちょっと白的過ぎるような気がするんです。もっと黒的なものもあっていいと思います。黒スリジェが。
時に粗雑で、荒々しくさえある、野心的な何か。洗練という名の汗を掻いて水を循環させるエクササイジング。あるいは土着的な何か、かも知れません。
○フィリップ・ブルゴーニュ - Philippe Bourgogne -(¥399)フィリップ2世(ブルゴーニュ公)の名を冠したケーキ。
上部には赤と黒のすぐりが一粒ずつ。表面をグラサージュしたショコラビスキュイの内側にはガナッシュが。最下層にも洋酒の効いたすぐりがタップリ入ってます。チョコだけだとかなり重かったかも知れない印象が、すぐりの酸味で、それまでの濃厚な食感に生まれ変わった息吹のような変化がありました。チョコの扱いには定評のある和泉シェフだけに、さすがの一品。
そして、アメリといいモンブランといい、ツブツブ感を非常に大切にしているなと、どのケーキを食べても感じました。やっぱりツブツブ感はいいですね。自分も和泉シェフと同じ70年代前半生まれ、ツブツブ(ジュース)世代といっていいので、ここらへんには非常に敏感にならざるをえません(笑)
全体的に落ち着いた、いやむしろ非常に濃厚なトーンなんだけど、すぐりの酸味でキュっと締まってる印象を与える、夏場でもイケるチョコ系ケーキでした。
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Salon de The CERISIER(サロン・ド・テ・スリジェ)住所:調布市小島町1-35-8
最寄駅:京王線「調布」駅北口下車(パルコ側)、左へ徒歩2分
営業時間:10:00-21:00
定休日:水曜日(祝日の場合、営業)
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