2006年06月26日

新宿Flags/Patisserie KIHACHI(1):ライムのタルト、桃のダックワーズ

仕事帰りに時々新宿駅の南口広場で一息つく事があります。下りのエスカレーターを降りた辺りで、いつもいいギターをプレイする外国人がいるのです。疲弊した身体の骨をグラスの中のアルコールに浸すような心地良さを与えてくれるんです。そんな時に新宿の街のネオンを見上げると何とも言えない気分になります。

そこでふと目に入るのは新宿Flags3階のKIHACHI。しばらくギターの音色に耳を傾け続けたあと、フラっと立ち寄ってみました。これは先々週の火曜日、6/13ですね。

kihachi_tarteaulyme.jpg

○ライムのタルト - Tarte au Lime -(¥452)

レモンのジュレにムース、中に赤い色をしたジュレが入ってるんですけど、よく判りませんでした。生地は薄めのパイ生地です。

疲れている身体にこのライムの酸味は染みる思いです。そういえば、子どもの頃、サッカーの試合でハーフタイムに食べたレモンの輪切りのハチミツ漬けは最高でした。ちょっと思い出してしまいました。

kihachi_dacqoiseauxpeche.jpg

○桃のダックワーズ - Dacqoise aux peche -(¥452)

季節限定のダックワーズ。生地がちょっとおとなしいんですよね。もう少しアーモンドの香ばしさと粗雑な歯触りがあると嬉しいです。クリームも普通でした。プレーンなダックワーズにしとくべきだったかも…。

(あとがき)
そんなわけで、このPatisserie KIHACHI新宿Flags店、Cafeともども、3階のリニューアルに伴い、7/2をもって閉店するそうです。Patisserie KIHACHI自体は伊勢丹にも入っているので特に困らないですが、「閉店」という響きは、なんだか胸を切なくさせるのでした。
posted by 照乃芯 at 23:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | パティスリー(未分類) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

自由が丘/Patisserie Paris S'eveille(2):シュープレーム、ミゼラブル

6/10の土曜日、紀尾井町のピエール・エルメへ行った帰りに渋谷へ寄って、This Week1に出店中だったパリセヴェイユに。デフェールも来てて、6/8木曜日には金子・安食両シェフのコラボ・デセールが限定100食で登場したようです。食べたかったよぉ…。

ま、今月はエーグルドゥースの限定ケーク食べたし、またいつかの機会にでも。この日はデモンストレーションキッチンでパリセヴェイユの金子シェフが腕をふるっていらっしゃって、間近で拝見する事ができて嬉しかったです。しかも、パリセヴェイユのショーケース前でケーキを選んでいる時にシェフとすれ違ったり。おお!(笑)

paris_seveile_supreme.jpg

○シュープレーム - Supreme -(¥501)

春に出た新作です。ブラックベリー風味のムースショコラでショコラ・ビスキュイを挟み、その下にブラックベリーを合わせた紅茶クリーム。更にガナッシュとビスキュイという構成。表面のグラッサージュも綺麗。各層の味がバランスよく並んでいて、どれかが主張し過ぎて角が立つという事がない。美味しいです。

桑の実を食べるのは初めてかも。更に続きます。

paris_seveile_miserable.jpg

○ミゼラヴル - Miserable -(¥481)

キャラメルがけのナッツとオレンジ・コンフィ入りのバタークリームは全体的にオレンジ風味でまとまっています。そしてダックワーズ生地。

上に沢山載ってるクルクルのメレンゲがエーグルドゥースのイヴォアリンヌっぽくて、つい選んでしまいました。メレンゲひとつひとつにオレンジシロップが数滴打ってあるのもよく見えます。メレンゲ自体、軽くオレンジ風味ですね。

非常に爽やかなケーキです。…ただ、爽やかといってもそこはエーグルドゥースの持つ爽やかさとやや違い、そこはやはり濃厚さに特徴のあるパリセヴェイユのケーキだな、と思わせる重さのようなものも同居しているような感じがします。

この「重さ」というのは食べづらいだとかいう意味ではなく、なんていうのかな…満足感としての重さのようなものを感じました。イメージとしてそれが伝わってきますし、フォークの先の手応えとしても伝わってきます。これは、三枚のダックワーズ生地としっかりしたバタークリーム、キャラメルがけのナッツの仕業かもしれません。ただの白的なケーキではない、という辺りが好きです。

パリセヴェイユのケーキは、白と黒とで味の濃厚さがはっきりとコントラストを描きますよね。見るからにチョコ系のムッシュ・アルノーとかだとしっかり濃厚で、白いコム・ニューヨーカーなどは比較的あっさり食べ易い。パリセヴェイユでは白黒を組み合わせて戴くとバランスの良い食後感が味わえるのではないでしょうか。

二つ食べただけでこれだけの充実感が味わえるパティスリーもなかなかありません。トレンドではないかも知れませんが、自分の中では1、2を争うぐらい好きなお店です。

そして、いつもながらデザインが美しい。非常に洗練されていて、かつエロイ!
エロイの好きですから(>_<)

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Patisserie Paris S'eveile(パティスリー・パリセヴェイユ)

住所:東京都目黒区自由が丘2-14-5
最寄駅:東急東横線「自由が丘」駅下車、徒歩3分ほど。
営業時間:10:00-20:00(L.O.19:30)
定休日:無休
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posted by 照乃芯 at 00:38 | Comment(0) | TrackBack(2) | パリセヴェイユ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

紀尾井町ニューオータニ/PIERRE HERME Patissier(2):エモーション・モザイク

pierreherme_emotion_mosaic.jpg

○エモーション・モザイク - Emotion Mosaic -(¥735)

ドゥ・ミルフィーユの他に何を買おうか迷ったんですが、最近出たモザイクシリーズから一つ選んでみました。ニューオータニのラインナップってあれだけなんでしょうか。もう少しあるといいんですけど…。青山は面倒だから行くの止めちゃった。

下からグリオットのジュレ、ピスタチオのジュレ、ピスタチオ風味のダックワーズ、ピスタチオ・アングレーズとマスカルポーネチーズを合わせたクリーム。グラスに入ったこれらを丸いホワイトチョコでフタをして、上にアメリカンチェリーという構成です。このグラスはそのまま飲み物用として普段使えますね(笑)…グラス代の分はいくらなんでしょうね。

デセール的なケーキですが、グリオットとピスタチオの組み合わせは、一瞬フラウラのタルト・オー・マカロンを思い出しました。この部分はルノートル門下の共通点と見ていいんでしょうか。

ピスタチオは本当に軽い酸味程度で、口当たりは軽く食べ易いですが、実は一番下にはシッカリお酒の効いたグリオットがゴロゴロと沢山、まるでタピオカみたいにジュレの中に入っています。これが結構来る(笑)

こないだ下北沢で靴を買った帰りに「たぴおか屋」でマンゴー・タピオカを飲んだばかりなので、どうしてもタピオカを連想してしまうんです(つい寄っちゃうな、あのお店)。それにしても、一番最後に食べる部分にこれっていうのはガツンときます…。そういうの好きですけどね。全体的なお味は、まあ普通という感じです。あっ、お酒の効いたグリオットは普通じゃ、ないか。

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PIERRE HERME Patissier(ピエール・エルメ・パティシエ)

場所:東京都千代田区紀尾井町4-1 ホテルニューオータニ・メインロビィ1階右手
最寄駅:JR中央線「四谷」駅より徒歩5分
営業時間:11:00-21:00
定休日:無休

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posted by 照乃芯 at 00:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピエール・エルメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

紀尾井町ニューオータニ/PIERRE HERME Patissier(1):ドゥ・ミルフィーユ

6/10の土曜日の昼過ぎにピエール・エルメに行ってきました。新宿伊勢丹でエルメのミルフィーユがどんなものなのか「確認だけ」した事があったんですが、買うならニューオータニで、と思っていました。

今回はJR四谷駅から訪問しましたが、今は外堀公園沿いの坂を紫陽花を鑑賞しながらオータニに行けます。これは断然オススメです。

到着後、メインロビィ1階の右手にブティックを見つけた時は正直その狭さに面食らいましたが、せっかくなのでサツキのショーケースも覗いていきました。ですが特に買いたくなるケーキもなかったので(笑)、素直にエルメのサロンへ踵を返し、ドゥ・ミルフィーユとエモーション・モザイクを買っていきました。

帰りは半蔵門線で渋谷へ寄ってゆくため永田町まで移動。紀尾井坂の美しい並木の間隔と配列に軽く視線を仰ぎつつ下りきると、「そこ」はちょうど谷間になってて、昇りの清水谷坂でヒドイ目に遭いました(>_<) でも、なんとなく思うのですが、もしかしたら清水谷で右へ曲がっていれば、平坦な道のまま永田町へ行けたのではないかと。あの坂をわざわざ昇って赤プリの方まで回っていった自分はまさか…………。

最後に負け惜しみですが、清水谷坂にはエスカレーターを付けるべきではないでしょうか(笑)

pierreherme_2000feuille.jpg

○ドゥ・ミルフィーユ - 2000 Feuille -(¥630)

…実はエルメのミルフィーユはとても濃厚であるという話を聞いていたため、わざと先送りして、これまでいろんなお店のミルフィーユを食べ歩いて自分の中で下地(舌地)となるものを作ってきました。パティスリー巡りも、かれこれ47ヶ所になるでしょうか。最初のイメージ・基準にエルメを持ってくるのではなく、まず外堀から埋めるような感覚で食べてきました。日本人目線のミルフィーユから始めて、フランス人目線で締めると、見え方に広がりがあると思うし、更なる探求心も芽生えるのではないかなと。それで、そろそろエルメを見ておくいいタイミングだと思って、先週(6/4の事です)のイル・プルー・シュル・ラ・セーヌに続いて、足を運びました。

何種類かミルフィーユが存在するのは知っていたのですが、この日ショーケースにあったのはドゥ・ミルフィーユとミルフィーユ・モザイクの2種。購入したのはドゥ・ミルフィーユの方でした。そして、実際に食べた印象ですが……美味しい!

もっと早く食べとけばよかった(笑)
とにかく大きい!ここまで大きいとは思わなかった。
全長約10cm。高さ約4.5cm。レピキュリアンのミルフィーユと比べたら3:1くらいの比率がありそうな感じです。いや別にレピキュリアンを責めてるわけではありません(笑)

630円ですけど、これならまあいいかな。

さてケーキのほうですが、よくカラメリゼされたフィユタージュの上にアーモンドが一粒。これも単なる飾りというんではなく、甘くて非常に食べ易く美味しいと同時に、これから口へと運ばれてゆくプラリネクリームなどのアンサンブルのアイキャッチ的な存在感を醸し出してます。

下層がナッツの混ざったプラリネクリーム、上層がプラリネ風味のムースリーヌ。フィユタージュもサクサクとしてて理想的です。その断面を見ると、とても美しいです。ミルフィーユのフィユタージュってこうあってほしいなあとつくづく感じさせてくれます。決して「バリバリ」ではなく「サクサク」であるという点が実に好ましいと感じます。苦味もなく、必要最小限度の香ばしさを保っていて、しかも硬過ぎず。とても好きになりました。

そして色。食べる前に上面にアーモンドを一粒載せておく事で、茶色のグラデーションが始まる事を視覚的に印象付けています。ちゃんと「意味」があるんですね。千枚の木の葉(ドゥ・ミルフィーユだと二千枚ですね)であるのだから、木や葉の色である茶系統でまとめているのは色彩的に非常に理にかなったもので、一瞬木の葉が沢山重なったようなイメージ、二次的な視覚効果を与えてくれますよね。基本に忠実というか、土着の側面ですね。クラシックなケーキの中に、文化や風土・歴史・(人の)営みを踏まえた土着を盛り込んで丁寧に作りこんでゆけるシェフには相応の実力というものを感じます。

ピエール・エルメのミルフィーユを眺めていると、いつの間にか自分は自然の中に立っています。

歩き出すと、小枝の折れる音や、重なった木の葉が擦れ合う音だけが鼓膜を叩きます。ふと、しゃがんで足元の木の葉を千枚掻き集め始めた自分は、本物の木の葉を重ねる事でミルフィーユを作ってみます。

…………すると、それは次の瞬間、台所に立ってキャベツに包丁を入れて断面を繁々と見つめている場面に移り変わり、すぐに次の瞬間にはエルメのミルフィーユにフォークを入れている自分に変わっているのです。さっきまで白いお皿の上に載ったミルフィーユを繁々と眺めていた自分が我に返ります。

「ああ、ここに本物がある。」

ここでいう「本物」とはフランスの文化や血が身体に流れるフランス人の作ったもの、という意味です。一瞬、今まで食べてきたお店のミルフィーユすべてが目の前に現れ、そしていくつものミルフィーユが幻になって消えていきます。そこに残った一つのミルフィーユ。エルメでした。

見た目の雰囲気だけで要素を追加してしまうというのは、実は余計な足し算なんですね。イチゴを載せたり、フランボワーズを載せたりするのも、正直な気持ちとして自分には余計な仕事だと感じています。味本位の結果として、フィユタージュのサクサク感を損なわずに水分の豊富なフルーツを持ってくる二律背反的な要素を組み合わせる技術とスキルを持ち合わせているのならOKなのですが、そこを克服したいがためにフィユタージュをバリバリにして切りづらくしてしまっては「食べにくいケーキ」という評価につながり兼ねませんし。要はきちんと引き算がなされているか否か。何故イチゴが載っているのか。何故イチゴが載っていないのか。

エルメのミルフィーユは濃厚ですがそれは決して足し算ではありません。そして、それが何をイメージしているのか本人に喋ってもらわなくても伝わってくるのは、つまり十分に引き算ができているからです。ケーキの中にコミュニケーションが存在し、コミュニケーションが成立する。これはすごく大事なことではないでしょうか。視覚的に味覚的に伝達すべきデザインがこのミルフィーユには備わっている証拠であるということです。さすがエルメ。これは納得です。もうこれ以上の贅言は不必要だと思います。

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PIERRE HERME Patissier(ピエール・エルメ・パティシエ)

場所:東京都千代田区紀尾井町4-1 ホテルニューオータニ・メインロビィ1階右手
最寄駅:JR中央線「四谷」駅より徒歩5分
営業時間:11:00-21:00
定休日:無休

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posted by 照乃芯 at 00:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | ピエール・エルメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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